飲み物がわかる辞典 「山廃酛」の解説
やまはいもと【山廃酛】
日本酒の製造工程における酒母の製法の一つで、基本的には江戸時代に完成した伝統的製法、生酛(きもと)を踏襲するが、相当の手間を要する「山卸(やまおろし)」の工程を廃止し、これを補う改良を加えた製法。仕込みには「水麹」と呼ばれる方法を採り、まず麹を水に浸漬して酵素を浸出させておき、ここに蒸した米を仕込む。また蒸し米のでん粉の糖化進行時に、山卸に替え、麹から生じた酵素が浸出した液体をくみ出して米に掛けまわす「汲み掛け」と呼ばれる工程を行い、糖の生成がすみやかに均一的に行われるよう促進する効果を得る。タンク内で行うため、糖化中の有害微生物の増殖を抑えるための温度管理も比較的しやすい。工程におよそ1ヵ月を要する。1909(明治42)年、醸造試験所(現独立行政法人酒類総合研究所)の技師嘉儀(かぎ)金一郎が開発。◇「山卸廃止酛」の略。⇒生酛、速醸酛