飲み物がわかる辞典 「速醸酛」の解説
そくじょうもと【速醸酛】
日本酒の製造工程における酒母の製法の一つで、乳酸を用いて酒母を酸性に保ち、酵母を培養するもの。江戸時代に完成した伝統的製法、生酛(きもと)では、乳酸菌を利用して乳酸を生成させ、酒母を酸性に導くことで、日本酒のアルコール発酵に必要な酵母(清酒酵母)の培養が可能で、かつそれ以外の有害微生物が繁殖できない状態に整える。しかしこれには高度な管理技術を要し、暖冬の年などは酒母中に繁殖した有害微生物によりもろみが腐ることも多くあった。そこで、乳酸菌を用いず、高純度の優良な乳酸を用いて有害微生物に汚染されにくい環境を得、比較的安全に醸造できる技術が開発された。仕込みの際、麹を水に浸漬する時にあらかじめ乳酸を添加しておき、そこへ清酒酵母、次いで蒸した米を加えるもの。乳酸菌の増殖と乳酸の生成にかかる時間を短縮できるため、工程に要する期間はおよそ2週間と、生酛や山廃酛(やまはいもと)の半分ほど。1910(明治43)年、醸造試験所(現独立行政法人酒類総合研究所)の江田鎌治郎が開発。現在行われる酒造の大半はこの製法による。