出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…肩までの短衣,つまり袖なしの衣服で,古くから庶民の間で着られたものらしく,《万葉集》巻五の山上憶良の〈貧窮問答の歌〉の中に〈綿毛奈伎布可多衣(わたもなきぬのかたぎぬ)〉とあるのも,麻などのそまつな単(ひとえ)の肩衣であったにちがいない。正倉院に伝えられている袖なしの布衫(ふさん)(麻製の肌着)や平安時代以後の庶民の着た〈手無〉なども,これと同類のものであろう。しかし近世以後における肩衣は,このような衣服の下に着る袖なしの下着や袖のない衣服そのものではなくて,むしろ古い時代の〈襅(ちはや)〉〈小忌衣(おみごろも)〉,あるいは門徒宗徒や巡礼が用いる白布の袖なしのように,主要衣服である小袖の上に補助衣的ないしは浄衣(じようえ)的な意味をもって着用されたもののようである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」