単衣(読み)ひとえ

日本大百科全書(ニッポニカ)「単衣」の解説

単衣
ひとえ

とも書く。ただし公家装束(くげしょうぞく)の単は、単とは書かない。単衣は一重に仕立てられた衣服の総称で、袷(あわせ)に対する語。単長着、単羽、単コート、単帯、単長襦袢(じゅばん)、単袴(ばかま)、単襲(かさね)などがあげられるが、狭義には単長着をさす。おもに夏の衣服に用いられる。布地は綿織物に浴衣(ゆかた)地(手拭中形(てぬぐいちゅうがた)、長板中形)。絣(かすり)木綿、縞(しま)木綿、三浦絞り(有松絞り)や博多絞りなどの絞り類、経(たて)または緯(よこ)糸に太い糸を織り込んだ梅織もある。絹織物には盛夏用として平絽(ひらろ)、絽縮緬(ろちりめん)、紗(しゃ)、夏大島、小千谷縮(おぢやちぢみ)、上布(じょうふ)、薄御召(おめし)、翠紗(すいしゃ)などがあり、初夏、初秋には縮緬、綸子(りんず)、御召、紬(つむぎ)なども使用される。夏の礼装、正装には男女とも絽を用いる。合着、普段着にはセルを用いていたが、第二次世界大戦後は、夏以外も毛織物の和服地を用い、年間を通して単衣で過ごす人も増加している。

[藤本やす]


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精選版 日本国語大辞典「単衣」の解説

ひとえ‐ぎぬ ひとへ‥【単衣】

〘名〙
裏地のついていない衣服。
※書紀(720)斉明六年三月(北野本訓)「便ち単衫(ヒトヘキヌ)に換着(かへきい)て」
② 装束の下の肌着、または肌小袖の上につける裏なしの衣(きぬ)。女子は袴の上につけるのでを長く引き、男子は袴に着こめるので裾を短く仕立てるのを普通とした。
※落窪(10C後)一「ひとへぎぬはなし。袴一つ著て、所々あらはに」

たん‐い【単衣】

〘名〙 ひとえの着物。ひとえもの。ひとえ。また、一枚の着物。たんえ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※寛斎先生遺稿(1821)四・雨涼「老身亦覚単衣適、背手南楼見斗傾」 〔後漢書‐陸続伝〕

ひとえ‐ごろも ひとへ‥【単衣】

※兼輔集(933頃)「わがきたるひとへ衣は山吹八重の色にも劣らざりけり〈藤原兼輔〉」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「単衣」の解説

単衣
ひとえぎぬ

裏地のつかない,装束の下着のこと。単 (ひとえ) ともいう。男性のものは広袖の短衣でが開いており,生地の織は綾織が多く,色の濃い若向きのものから,次第に淡い色が用いられた。女性の単衣は広袖で裾が長く,十二単 (じゅうにひとえ) や小袿 (こうちき) 装束の最下衣として用いられた。

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デジタル大辞泉「単衣」の解説

ひとえ‐ぎぬ〔ひとへ‐〕【衣】

公家男女の装束の下に肌着として用いた裏のない衣。平安末期に小袖肌着を着用するようになると、その上に重ねて着た。地質は主に平絹で、綾の文様(ひし)、色は紅・白・青など。

たん‐い【単衣】

ひとえの着物。ひとえもの。
「―とも甚だ薄し」〈服部誠一・東京新繁昌記
1枚の着物。

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世界大百科事典内の単衣の言及

【単】より

…公家の衣服の一種で,単衣(ひとえぎぬ)の略。公家の服装構成で最も下に着用される衣。…

※「単衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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