改訂新版 世界大百科事典 「平所埴輪窯址」の意味・わかりやすい解説
平所埴輪窯址 (ひらどころはにわかまあと)
島根県松江市矢田町平所に所在する。意宇(おう)平野の北部を限る丘陵地帯にあり,茶臼山北東麓の緩斜面上に,焚口(たきぐち)を谷に向けて築かれる。国道9号線バイパス建設工事に伴う埋蔵文化財調査によって発見され,1975,76年に島根県教育委員会が発掘した。窯は1基にとどまり,トンネル状の窖窯(あながま)構造をもつ。窯体の上部は失われていたが,残存長5.8m,幅1.2~1.55m,窯底の傾斜角10~15度を測る。埴輪や若干の土師器(はじき)が窯底の全面に散乱していた。出土埴輪には円筒,家,人物,馬,鹿,猪の各種がある。馬形埴輪は馬具の表現が写実的であり,当時の馬装を知る貴重な資料を提供した。鹿形埴輪は,別作りにした角を頭部の孔に挿入する特別な方式をとる。また,頭部を捻転させた優美な造形の妙は,他の埴輪に例をみない。窯の年代は6世紀前半にあたる。なお,出土品は1977年に重要文化財に指定された。
執筆者:川西 宏幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報