序曲(ワーズワースの長編詩)(読み)じょきょく(英語表記)The Prelude, or Growth of a Poet's Mind

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

序曲(ワーズワースの長編詩)
じょきょく
The Prelude, or Growth of a Poet's Mind

イギリス詩人ワーズワースの自伝的長編詩。「詩人の心の成長」という副題をもつ。1799年ころ着手され1805年までにいちおう完成したが、その後再三加筆訂正され、初版が出版されたのは詩人没後の1850年7月であった。8000行余のこの作品が夫人によって『序曲』と題されたのは、生前詩人が構想していた「隠者」と題する人間、自然、社会を主題とする長編哲学詩三部作を念頭に置いたためである。フランス革命期の激動する社会と動揺する価値観に対して、自己の幼少期からの体験を回想しつつ、大自然と深く交感するところに人間の本来的な存在様式をみいだし、機械論的人間観や教育論を批判した。その確信に満ちた思想と精妙な心理的表現は19世紀後半から文学・思想・芸術に影響を及ぼし、ワーズワースの代表作として今日高く評価されている。

[岡 三郎

『岡三郎訳『序曲』(1968・国文社)』

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