令(りょう)制の後宮における地位の一つ。「ぶにん」とも読む。皇親出身の妃(ひ)に次ぎ、嬪(ひん)の上に位置し、定員3名。三位(さんみ)以上を原則とし、大臣の女(むすめ)などが多い。聖武(しょうむ)天皇の夫人藤原光明子(こうみょうし)をはじめ、夫人から皇后にのぼった例も二、三ある。しかし平安初期から現れた女御(にょうご)の地位がしだいに向上するに及び、嵯峨(さが)天皇の夫人藤原緒夏(おなつ)を最後として廃絶した。また天皇の母にして夫人位にあるものを皇太夫人といい、とくに中宮職(ちゅうぐうしき)を付置されて后位に准ずる優遇を受けたが、これも醍醐(だいご)天皇の養母藤原温子(おんし)を最後として廃絶した。
[橋本義彦]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「ぶにん」とも。和訓はオオトジ。天皇のキサキの一つ。後宮職員令に内親王の官である妃と並んで3員の夫人が規定される。相当位階は三位以上で,五位以上の嬪(ひん)の上位に位置し,所生子が即位すれば皇太夫人にされるべきものであった。文武天皇夫人の藤原宮子(のちに皇太夫人)を初例とし,光明皇后・藤原乙牟漏(おとむろ)・橘嘉智子(かちこ)など夫人から立后した例も多い。平安時代になると令制のキサキの制はくずれ,嵯峨朝の藤原緒夏(おなつ)を最後に廃絶した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…天子は皇后のほか多数の妃嬪(ひひん)を抱えたが,すべて後宮に住んだので,皇后以下を後宮とよぶことがある。《礼記(らいき)》昏義に,古代には皇后が六宮を建て,3夫人,9嬪,27世婦,81御妻をひきいて内治をつかさどり,婦徳を明らかにしたとあり,後世の後宮制度の規範となった。後宮には后妃のほか,女官や宦官,賤民などが属して,宮中の職務や使役に従事した。…
※「夫人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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