引張(読み)ひきはる

  • ひきは・る
  • ひっぱり
  • ひっぱ・る

精選版 日本国語大辞典の解説

〘他ラ四〙
① むりに連れて行く。引き立てる。ひっぱる。
※枕(10C終)三九「そばへたる小舎人童などに、ひきはられて泣くもをかし」
② たるみのないように強く引いて張る。
※日葡辞書(1603‐04)「ユミヲ ヒサシク fiqifatte(ヒキハッテ)イレバ ユンゼイツクル」
③ 強い意志をもつ。
※愚管抄(1220)四「後二条殿又事のほかに引はりたる人にて」
④ 身につける。着る。
〘名〙
① ひっぱること。
② (互いに引き合うことの意から) 合同ですること。共同。一緒。
※咄本・譚嚢(1777)三人一座「引ぱりにして、三人でやるからは、いってもゑい。五匁づつ二人ながら、おれが所へよこしやれ」
③ 同一の程度、有様であること。好一対。
※滑稽本・素人狂言紋切形(1814)下「操狂言の庄屋と、歌舞伎の大屋と、引張(ヒッパリ)な役さ」
④ 取り合い。競争。
※雑俳・露丸評万句合‐宝暦一三(1763)「壱反をひっはりに着る云名附け」
※歌舞伎・景清(1842)「岩永、梶原抜かけるを、重忠、仁田留る。引(ヒッ)ぱりよろしく。三重かけりにて」
⑥ 揚代が南鐐一片(二朱銀)の安女郎。また、道ばたで通行人の袖をひっぱって売淫する女。引張女郎。夜鷹。つじぎみ。やぼち。街娼。また、女をののしってもいった。
※浄瑠璃・百合稚高麗軍記(1742)四「ヤイそこなひっぱりめ」
※洒落本・蕩子筌枉解(1770)幽州「今この桑名屋といふひっぱりへ来てゐる」
〘他ラ五(四)〙 (「ひきはる(引張)」の変化した語)
① ひき延ばす。ひき延ばして張る。また、線などをひく。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)張周趙任申屠第一二「唐土にはまないたの上にのせて、四の枝をひっはりて斧を以て頸と腰とをきって三段になすぞ」
② 力を入れてひき寄せようとする。
※太平記(14C後)二「両方の手を引張(ヒッパッ)て、其上を歩せ奉ん」
③ 無理に連れて行く。つかまえて引き立てる。
※高野本平家(13C前)一「上卿をとてひっはり」
④ ひき連れる。伴う。
※恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉三〇「左(と)も右(かく)も、向方の奴を引伴(ヒッパ)って来ると為よう」
⑤ 誘い入れる。また、誘惑する。「仲間に引張る」
※大本神諭‐火之巻(1920)〈出口ナオ〉大正七年旧三月一五日「この御道(おみち)は引っ張りには行かんから、気が附いて来たら出て御座れ」
⑥ 磔(はりつけ)にする。磔の刑に処する。
※浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)中「浅ましい欲心に海賊の仲間に入〈略〉木の空にひっぱらるるは今の事」
⑦ 時間・期限を延ばす。また、解決や決定を引き延ばす。
※浄瑠璃・薩摩歌(1711頃)中「入相時分に膳立して、夕飯・夜食をひっぱり」
⑧ (自動詞的に用いて) 匹敵する。肩を並べる。
※洒落本・廻覧奇談深淵情(1803)其三「鼠色の顔(かんばせ)は鶏卵(たまご)のしろみにひっぱる」
⑨ かぶる。着る。ひっかける。
※雑兵物語(1683頃)下「夏はやれかたびら一枚、冬は木綿の袷をひっはりて」
⑩ もらってくる。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「そねむなイ、此野郎ほうをのべべ(〈注〉うつくしいきもの)を引張(ヒッパッ)たと思って」
⑪ 引用する。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の花見「そんな喩へを引っぱられちゃ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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