弾性線維性偽黄色腫

内科学 第10版 「弾性線維性偽黄色腫」の解説

弾性線維性偽黄色腫(先天性結合織疾患に伴う心血管病変)

(4)弾性線維性偽黄色種(pseudoxanthoma elasticum:PXE
概念
 弾性線維性偽黄色腫は,皮膚,眼,心血管などの弾性線維に石灰化と変性・断裂を生じる遺伝性多臓器疾患である.頻度は7万〜10万人に1名程度のまれな疾患である.
病因
 ABCC6遺伝子異常が病因の常染色体性劣性遺伝形式を呈する疾患である.ABCC6遺伝子はATP依存性膜輸送蛋白の1つである.ABCC6遺伝子は肝,腎におもに発現することより,二次的に弾性線維が傷害される代謝疾患であると推測されている.
病理
 皮膚真皮中層から深層にかけて,弾性線維の膨化と断裂がみられ,石灰沈着を伴う.血管壁にも同様の変化がみられる.
臨床症状
 弾性線維性偽黄色腫では進行性に弾性線維の石灰化と変性・断裂が発生し,弾性線維の豊富な皮膚,眼,心血管などの組織に障害を生じる.
 皮膚においては,頸部や関節屈曲側にオレンジ色丘疹が集簇し,加齢とともに皮膚の弛緩が進行する.
 眼においては,網膜脈絡膜の間の弾性線維に富んでいるBruch膜の変性により血管線状(angioid streak)を形成し,視力障害や失明をきたす.視力障害は網膜の脆弱性のため,出血・血管新生を引き起こし,重度な場合が多い.
 心血管においては大血管の中膜に線維化および石灰化とそれに続く粥腫形成が起こり,血管の狭窄や出血をきたす.これにより,腎動脈病変による高血圧,下肢動脈病変による間欠性跛行,冠動脈病変による狭心症,心筋梗塞などをきたす.
診断
 皮膚組織のKossa染色による石灰化,弾性線維の断裂像は診断に有用であり,眼底の血管線状(angioid streak)も有用である.ABCC6遺伝子の解析も行われる.
経過・予後
 緩徐に進行する疾患であり,心血管病変が生命予後を左右する.また眼病変により失明をきたすことがある.
治療
 心血管障害は生命予後を左右することがあり,血圧の管理,狭窄病変に対する血行再建(ステント留置,バイパス手術)などを行う.眼症状に対する適切な治療も重要である.皮膚病変に対しては美容的形成手術も行われる.[阿南隆一郎・鄭 忠和]
■文献
Prockop DJ, Bateman JF: Heritable disorders of connective tissue. In: Harrison’s Principles of Internal Medicine, 18th ed (Longo DL, et al ed), pp3204-3214, McGraw-Hill, New York, 2012.
Dean JC: Marfan syndrome: clinical diagnosis and management.Eur J Hum Genet, 15: 724-33, 2007.
Cañadas V, et al: Marfan syndrome. Part 1 and 2: pathophysiology and diagnosis. Nat Rev Cardiol, 7: 256-276, 2010.
Loeys BL, et al: Aneurysm syndromes caused by mutations in the TGF-β receptor. N Engl J Med, 355
: 788-798, 2006.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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