精選版 日本国語大辞典 「網膜」の意味・読み・例文・類語
もう‐まく マウ‥【網膜】
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眼球壁のもっとも内側の膜で、人間の目をカメラに例えたとき、フィルム(感光膜)に相当するものが網膜である。すなわち、角膜を通り瞳孔(どうこう)(ひとみ)を通過して水晶体と硝子体(しょうしたい)を通った光線は、網膜へ像を結ぶことによって見る対象の知覚が始まる。しかし、網膜はフィルムとは比較にならないほど精巧な構造と働きをもった感光膜であり、視細胞のほか、双極細胞、神経節細胞などの神経細胞が複雑に絡み合ってできている。
網膜は場所によって厚さが違うが、平均すると約0.2ミリメートルの厚さをもった透明な膜である。実際に感光膜としての働きの中心になる感覚細胞、すなわち光を感ずる視細胞は、光の進行からみると膜のいちばん奥に位置している。網膜の感光度は周囲の明るさに応じて変化し、暗いところでは感度が上がり、明るいところでは感度が下がる。この点ではフィルムよりもテレビカメラの撮像管に似ている。しかし、撮像管は明暗に応じて感度を切り替える必要があるが、網膜の感度は無段階に自動的に変化するので、撮像管よりさらに精巧である。また、網膜のこの感光度の変化の幅をフィルムの感度と比較してみると、明るいところでISO(イソ)50ぐらいのフィルムとして働いているが、夕方の薄暗いところではISO400ぐらい、真っ暗なところで感度がもっとも上がるとISO5000のフィルムに相当するようになる。さらに網膜がフィルムと違う点は、網膜が部位によって解像力を異にするということである。すなわち、網膜の中心の黄斑(おうはん)では解像力が非常に鋭く、中心を離れると解像力が急速に落ちていく。1.2とか1.5という視力は、この中心部の解像力である。
前述の視細胞には錐体(すいたい)と桿体(かんたい)との2種類があり、鋭い視力や色の感覚と関係があるのは錐体で、暗いところで感度が上がることと関係のあるのが桿体である。したがって、部位によって視力が違うのは、この錐体の分布密度と関係している。すなわち、視力のもっとも鋭い黄斑の中心部には錐体だけが存在し、ここから離れるにしたがって錐体の密度は低くなっていく。また、網膜にある錐体の数は約700万個、桿体の数は1億個以上である。これに対し、網膜で受け取られた情報を大脳へ伝える視神経の神経線維の数は約100万本である。したがって、網膜の中心部の錐体は一つの細胞と1本の神経線維が連絡しているが、中心から離れるにつれて数多くの視細胞が一つの働きのうえの単位をつくって1本の神経線維と連絡している。このことも、網膜の中心の解像力が優れていることと関係がある。
網膜に外界の像が写り視細胞が刺激されると、細胞から電気信号(パルス)が視神経へ送られる。網膜の像が写って視神経を通って大脳へ刺激が伝わる過程を、テレビカメラで像を撮ってビデオテープに記録する過程と比較すると、目からの情報の伝わり方がよくわかる。すなわち、視神経から先では情報が電気信号に変換されて運ばれるわけで、これはテレビカメラの撮像管に写った像が電気信号に変換されてビデオテープに記録される過程によく似ている。また、網膜の中でも神経細胞どうしの連絡があるので、これも視神経へ信号が送られる前に網膜の中で画像情報処理が行われているということができる。
網膜を検眼鏡で観察すると、網膜は透明なので、その奥にある網膜色素上皮層と脈絡膜との色調によって橙赤(とうせき)色に見える。さらに、透明な網膜の中を走る血管、網膜の中心部である黄斑、視神経の出口である視神経乳頭が認められる。
[松井瑞夫]
網膜にも種々な疾患が発生する。網膜血管病、網膜の炎症、網膜剥離(はくり)など網膜自体の疾患も多いが、高血圧や糖尿病などの全身疾患のときに網膜の血管を中心にいろいろな変化が現れる。
なお、かつて網膜の炎症性疾患を網膜炎と総称していたが、眼病理学の進歩とともに網膜炎を網膜症または網膜変性症、あるいは病因を示す疾患名に改められつつある。たとえば、糖尿病性網膜炎を糖尿病性網膜症(糖尿病網膜症)、色素性網膜炎を網膜色素変性症と改称したのも一例である。また、従来の網膜炎はぶどう膜炎の一部とみられるようになっている。
[松井瑞夫]
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…瞳孔を通して眼球内を見たときに見える部分。すなわち網膜および網膜血管,視神経乳頭,脈絡膜(ぶどう膜を構成する膜)を総合していう。これらの各組織は,機能的,解剖学的に密接な関係にあり,病的状態においても互いに影響しあうことが多いために,〈眼底〉として一括して扱うと理解しやすい。…
…光がくる方向に,またはその逆方向に定位して動物が動くことを光走性というが,光走性は原始的な光覚器をもつ動物から,発達した目をもつ動物までみられる一般的な視覚行動である。例えば,ミミズでは光走性は,皮膚光覚器により明暗を手がかりに行われるが,昆虫では,複眼により光源を網膜にとらえたり,左右の目に入る光の明るさが等しくなるように動いて光源に定位する。 発達した視覚器としては節足動物の複眼や脊椎動物と軟体動物頭足類のカメラ眼があげられる。…
…複眼は個眼が集まってできたもので,個眼の数は少ないもので100~300個,多いものでは3万個弱にもなる。 脊椎動物の目の網膜では,光の進行方向に対して,目のいちばん奥にある視細胞が最初に興奮し,興奮は網膜の表面に向かって,光の進行方向と逆向きに網膜内を伝わる。このような網膜を倒立網膜という。…
※「網膜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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