日本大百科全書(ニッポニカ) 「径山寺みそ」の意味・わかりやすい解説
径山寺みそ
きんざんじみそ
加工みその一種で醸造なめみその代表的なもの。金山寺みそともいう。9世紀文徳(もんとく)天皇(在位850~858)の時代に、中国浙江(せっこう/チョーチヤン)省の径山寺で修行中の僧覚心(かくしん)が特産のみその製法を習得し、帰国後、和歌山(紀伊由良(ゆら))の西方(さいほう)寺(後の興国(こうこく)寺)で伝授したとされている。さらに覚心は径山寺みその底にたまった汁で食品を煮るとすこぶるおいしいことを発見し、これがしょうゆの原型になった。現在の径山寺みそは、加工にくふうを凝らした赤褐色の柔らかいなめみそである。炒(い)った大豆に、大麦の麹(こうじ)、塩を加えた桶(おけ)に、一夜漬けにした塩漬けのウリ、ナスなどを混ぜ、重石(おもし)をして数日置き、麻の実、刻みしょうが、シソの葉を加えて密封し、半年以上熟成させてつくる。砂糖や水飴(みずあめ)などの甘味を加え、短時間でつくりあげるものもある。
[河野友美・山口米子]