日本大百科全書(ニッポニカ) 「心の一紙」の意味・わかりやすい解説
心の一紙
こころのいっし
「心の師の文(ふみ)」ともいう。村田珠光(じゅこう)が古市播磨澄胤(ふるいちはりますみたね)(1459―1508)に与えた茶の湯伝授の一紙。奈良の塗師(ぬし)松屋源三郎家伝来。「此道(このみち)第一わろき事ハ心のがまんかしやうなり」に始まり、珠光の主張する草庵(そうあん)茶の根本は和物と唐物(からもの)の名物道具の取り合わせにあって、その精神は冷え枯れた世界にあることを強調している。そのため、初心の者が備前(びぜん)・信楽(しがらき)物という冷え枯れた道具を使用することを言語道断といって禁止する。そして「心の師とはなれ心を師とせされ」の語で結んでいる。この文は、江戸時代宝永(ほうえい)年代(1704~11)に松屋から山中(鴻池(こうのいけ))道億(どうおく)に譲られ、近代には平瀬露香に伝わった。
[筒井紘一]