循環調節(読み)じゅんかんちょうせつ(その他表記)control of the circulation

改訂新版 世界大百科事典 「循環調節」の意味・わかりやすい解説

循環調節 (じゅんかんちょうせつ)
control of the circulation

血液循環が各種の体内機構の協調によって調節・制御されていること。ヒト哺乳類では,日常生活時にみられる各種ストレス,情動,防御反応,運動,姿勢変換,食事等に際して心拍出量は増減し,活動している組織や臓器血液が供給されるような血流の再分配が起こっている。他方,動脈血圧や血液量はだいたい一定の値を保っている。また大量出血時には脳や心臓に優先的に血液は再配分され,その他の臓器血流量は減少している。このように心拍出量,血流分配,動脈血圧,血液量が増減あるいは一定に維持されるのは多数の循環調節機構が同時に協調しながら働くためである。調節機構としては局所的なものと全体的なものがあるが,前者は主として各臓器固有の自己調節であり,後者は液性調節と神経性調節の二つに大別できる。とくに神経性の循環調節は,高等動物が日常生活を送るときの血液循環を最適に維持する機構としてきわめて重要である。

 (1)自己調節 心臓ポンプ作用の自己調節としてスターリングの法則がある。すなわち,1回心拍出量は拡張期末心室容積によって規定されている。血管には,各臓器,とくに脳と腎臓の血流量が動脈血圧80~160mmHgの範囲内で変動した場合,だいたい一定値に維持されるような固有の自己調節がある。(2)液性調節 ホルモンによる調節。血中にはノルアドレナリンアドレナリンアンギオテンシンⅡなどのホルモンが含まれており,これらが心臓や血管の収縮性を調節している。とくに除神経した心臓や血管の調節に重要であるが,健康例ではその重要性は低下する。(3)神経性調節 心臓や血管には自律神経が分布して,おのおのの興奮性や収縮性を調節している。その調節は,各臓器の血管平滑筋や心臓のペースメーカー,固有心筋等個別に分布している神経繊維によって不均等に,選択的かつ微妙に行われている。とくに日常生活時には高位循環中枢の働きで,一種の〈見込み〉的な調節や〈パターン制御〉が行われている。パターン制御とは,心臓と各臓器の血管機能が特定の組合せで同時に調節されることをいう。また頸動脈洞反射減圧反射あるいは化学受容器反射等各種の循環調節に関与する反射は神経系を介して行われており,したがって調節のスピードは速く,動脈血圧の維持等にきわめて重要である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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