日本大百科全書(ニッポニカ) 「忉利天上寺」の意味・わかりやすい解説
忉利天上寺
とうりてんじょうじ
神戸市灘(なだ)区摩耶(まや)山にある高野山真言(こうやさんしんごん)宗の寺。通称、天上寺、摩耶山寺という。山号は仏母摩耶山(摩耶山とも)。本尊は十一面観音(かんのん)。新西国(さいごく)三十三所第22番霊場。646年(大化2)伝説上のインド僧法道(ほうどう)仙人の開創と伝える。807年(大同2)弘法(こうぼう)大師空海が、梁(りょう)の武帝が願成就(がんじょうじゅ)のため祀(まつ)っていた仏母摩耶夫人像を請来、当山に奉安し山号を仏母摩耶山としたと伝える。この日本唯一体の摩耶夫人像は当山第二の本尊とされ、女人の安産守護仏として広く敬慕尊信を集めた。また十一面観音は古来、厄除(やくよ)け招福の秘仏、海上安全の守り本尊として信仰されている。寺運の盛時には子院僧坊300余宇を擁する西国第一の巨刹(きょさつ)であったが、延暦(えんりゃく)年間(782~806)の火災をはじめ、たび重なる天災地変、法難に遭遇し、加えて明治の廃仏棄釈で寺領を断たれ、数坊を残してしだいに衰微した。ことに1976年(昭和51)1月、不慮の火災により伽藍(がらん)を全焼。その後、復興が進められている。
[野村全宏]