秘仏(読み)ヒブツ

デジタル大辞泉 「秘仏」の意味・読み・例文・類語

ひ‐ぶつ【秘仏】

厨子ずしなどに納められ、普段拝観を許していない仏像仏画

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精選版 日本国語大辞典 「秘仏」の意味・読み・例文・類語

ひ‐ぶつ【秘仏】

  1. 〘 名詞 〙 大切にして人に見せない仏像。仏龕(ぶつがん)厨子(ずし)の中に納めて、ふだんはおがませない仏像。
    1. [初出の実例]「目はなをつつむことのはかなさ ひ仏とてひするにたれかまいるらん」(出典:俳諧・誹諧之連歌(飛梅千句)(1540)姉何第四)

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改訂新版 世界大百科事典 「秘仏」の意味・わかりやすい解説

秘仏 (ひぶつ)

平素宮殿(くうでん)や厨子(ずし)の扉が固く閉じられ,その内に安置される仏像は何ぴとも拝観が許されない,そのような状態にある仏像をいう。これは密教伝来以来生まれたことと思われるが,仏の威光障碍(しようげ)するものはなく,その神威は閉じられた扉を通して礼拝者になお十分に届くという考え方である。秘仏には,絶対に他見を許さない長野善光寺東大寺二月堂の本尊のごときものと,61年に1度,33年に1度,7年に1度,1年に1度というように,時期を定めて開扉(開帳)され信者にその尊容公開されるものとがある。法隆寺東院夢殿の本尊救世観音像は,明治時代に岡倉天心フェノロサによって白布のベールが除かれたが,それまで秘仏であったため保存はきわめて良好で,いまは春秋2季に公開されている。東大寺の執金剛神や良弁僧正像は毎年12月16日に開扉公開されている。
前立仏
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「秘仏」の意味・わかりやすい解説

秘仏
ひぶつ

秘せられた仏像の意で、厨子(ずし)や仏龕(ぶつがん)に納め、普段は扉や蓋(ふた)を閉じて拝観が許されない仏像(仏画を含む)。平安時代以降、密教の影響を受けたものと思われるが、日本では古くから例が多く、法隆寺夢殿の救世観音(くせかんのん)像、東大寺二月堂の十一面観音像、善光寺の阿弥陀(あみだ)三尊像石山寺の如意輪観音像、清凉(せいりょう)寺の釈迦如来(しゃかにょらい)像、浅草(せんそう)寺の聖(しょう)観音像、江島(えのしま)神社の裸形の弁才天像などがよく知られている。これらのほとんどは年1回ないし7年、33年、61年目などに開帳されるが、東大寺二月堂、善光寺、浅草寺の像のように絶対秘仏として開帳されないものもある。また法隆寺夢殿の本尊は鎌倉時代ごろから秘仏とされてきたが、1884年(明治17)フェノロサ、岡倉天心らにより神秘の扉が開かれたときの逸話は名高い。

 秘仏とされるものには諸条件があり、霊験(れいげん)あらたかなため秘して特別な尊崇をするもの、また密教の聖天(しょうてん)(歓喜天(かんぎてん))像とか裸形の尊像などのように、グロテスクもしくはエロティックすぎて一般の公開がはばかられるもの、あるいは災害などで像が損傷を受けたり、滅失して公開できなくなったものも含まれる。

[佐藤昭夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「秘仏」の意味・わかりやすい解説

秘仏
ひぶつ

公開されない仏像。法隆寺の夢殿観音のように特別の事情により,また霊験に対する崇敬により,あるいはまた形態が怪異で一般の拝観をはばかるなどの理由による。年に1回,33,61年などに1回開帳されるものもある。

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