日本大百科全書(ニッポニカ) 「愛は死を越えて」の意味・わかりやすい解説
愛は死を越えて
あいはしをこえて
Death House Letters
アメリカのジュリアスとエセル・ローゼンバーグ夫妻Julius and Ethel Rosenbergが、獄中から幼い2人の息子たちに送った書簡集。1953年刊。夫妻は原爆秘密を当時のソ連に渡したとの無実の罪で1950年6月に逮捕され、1953年6月シンシン刑務所で電気椅子(いす)で処刑されたが、同著は処刑後まもなくアメリカで出版され、続いて主要各国語に翻訳された。日本でも1954年(昭和29)出版され、大ベストセラーになった。『愛は死を越えて』は当時の邦訳題名。書簡集の特徴は、官憲に協力すれば死刑を減刑するとの誘惑さえも退けて真実を貫いた夫妻にふさわしく、やがて成人する子供たちにヒューマニズムと真実にあふれるメッセージを残していることである。
[陸井三郎]
『ローゼンバーグ夫妻著、山田晃訳『愛は死を越えて』(1954・光文社)』