日本大百科全書(ニッポニカ) 「慢詞」の意味・わかりやすい解説
慢詞
まんし
中国の歌謡文学である詞(し)の一種。初期の詞は比較的短い小令(しょうれい)が大部分であったが、北宋(ほくそう)中期の張先や柳永(りゅうえい)らのころから100字前後に達するような冗漫な篇幅(へんふく)をもつ詞が多くつくられるようになる。これを慢詞という。双調体のものが多いが、なかには四(じょう)240字に達する「鶯啼序(おうていじょ)」のようなものもある。各段の句格は牌(はい)(楽曲名)によってまちまちであるが、だいたいが四つの段落に分けられ、その大半が前後段で対応しているのは、やはり起承転結があるということであろう。頻用された牌には「沁園春(しんえんしゅん)」「水調歌頭」「念奴嬌(ねんどきょう)」などがあるが、なかには柳永の作中のある牌のように一首のみのものもある。
[田森 襄]