(読み)し(英語表記)Ci

  • 漢字項目
  • 詞 cí

翻訳|Ci

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

中国,韻文の一形態。特に代に栄え,唐詩,宋,元曲と並称されて時代を代表する文学形式であった。唐代に西域から「胡楽」が輸入されて流行したが,その曲に合せて歌った歌詞が起源。中唐頃に専門の詩人が意識的に楽譜に合せた歌詞を創作するようになって,ジャンルとしての詞がほぼ確立した。メロディー (曲子) に合せた歌詞であるから「曲子詞」ともいい,既成の譜に歌詞をうめる (填) ので「填詞 (てんし) 」,既成のメロディーによりかかる (倚) ので「倚声」という。また1句の長さがふぞろいなので「長短句」ともいい,詩から生れた余りものという意で「詩余」,さらに漢代以来の歌辞文学である楽府 (がふ) になぞらえて「楽府」とも「近体楽府」ともいう。中唐に確立し,晩唐に温庭 筠,五代に李 煜 (りいく) が現れ,傑作を生んだ。北宋に入って晏殊欧陽修らが五代の詞を継承,やがて長編形式の慢詞が生れ,張先柳永が宋独自の詞を開拓した。宋詞は作風によって豪放派と婉約派に二大別されるが,北宋において前者を代表するものが蘇軾 (そしょく) で,柳永のあとを継ぐ周邦彦 (しゅうほうげん) が後者を代表する。南宋に入って辛棄疾陸游が蘇軾を継ぎ,姜 夔 (きょうき) が周邦彦のあとを継いで,呉文英にいたって極点に達する。元,明にはほとんどあげるべき作者もないが,清に入って再び流行をみ,納蘭性徳朱彝尊 (しゅいそん) らの作者が現れるとともに選集が編まれ,音律上の研究も進められた。

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デジタル大辞泉の解説

ことば。文章や詩歌。また、特に、歌詞。「に曲をつける」
中国の韻文の一。唐末から宋代にかけて流行。もとは楽曲に合わせて作られた歌詩。1句の長短は不定で俗語を多く使う。塡詩(てんし)・詩余・長短句ともいう。
単語を文法上の性質から二つに分類したものの一。辞(じ)に対する。単独で文節を構成しうる語。名詞動詞形容詞形容動詞副詞連体詞感動詞接続詞がこれに属する。自立語時枝誠記(ときえだもとき)学説では接続詞・感動詞などはに入る。
[音](漢) [訓]ことば
学習漢字]6年
ことば。文句。「賀詞献詞祝詞序詞誓詞題詞弔詞
文法上の単語の部類。「動詞品詞副詞名詞
詩文。詩歌。「詞章詞宗(しそう)歌詞作詞
中国の韻文の一体。一句の字数がふぞろいなもの。「宋詞
[名のり]こと・なり・のり・ふみ
[難読]台詞(せりふ)祝詞(のりと)

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百科事典マイペディアの解説

中国の韻文一種。中国語ではツー。詩余,填詞(てんし),長短句とも。不規則な長さからなる詩行の自由詩で,形式は楽曲に規定される。もとは唐代における燕楽の歌辞をいい,それがしだいに伝統的な詩とは違った文学的性格を備え,宋代になって大いに流行した。五代南唐後主の李【いく】(りいく)や馮延巳(ふうえんし)などが優れた作品を作った。元代に散曲の流行に圧倒されて以後,ほとんど作られなくなったが,清代に復活。宋代のものが詞楽(ツアク)として朝鮮半島に伝わり,今日,器楽曲として残っている。
→関連項目有智子内親王欧陽炯温庭【いん】京本通俗小説朱彝尊辛棄疾蘇軾兪平伯李【いく】

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世界大百科事典 第2版の解説

中国における韻文文学の様式の一種で,歌辞文芸でもある。もとは唐代における燕楽(宴楽,儀式用の雅楽に対し,宴席などの音楽をいう)の歌辞をいい,それがしだいに伝統的な詩とは違った文学的性格を備え,宋代になって大いに流行した。〈漢文,唐詩,宋詞,元曲〉といわれるように,詞は宋代をもって様式を完成し,この時代の特有な文学としての位置をしめる。詞というほかにいろいろな呼び方があり,詩余,曲子詞,長短句,塡詞,近体楽府(がふ)などともいう。

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① ことば。文章。詩歌。
※文芸類纂(1878)〈榊原芳野編〉四「詞〈略〉長篇長短句等の変体もありしが詞を作りし者もありしと見えて」 〔庾信‐謝趙王示新詩啓〕
② 中国、古典文学の一ジャンル。唐代に流行した新しい歌謡の歌詞が、やがて文学形式として定着したもの。一句の字数が不定で、俗語を多用する。宋代に栄え、宋を代表する文学とされる。填詞(てんし)、詩余などとも呼ばれる。〔填詞図譜(1806)〕
③ 日本語の単語を文法上の性質から二つに大分類した一つ。自立語をいう。助詞、助動詞を辞(じ)というのに対する。⇔

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旺文社世界史事典 三訂版の解説

中国の韻文の一様式。詩余・塡詞 (てんし) ・倚声 (いせい) ともいう
外国音楽の影響で中唐ごろ発生。初め琴などの伴奏で女性の姿態心情を歌う庶民的歌曲の辞であったが,唐末期・五代に韻文として成熟し,宋代には音楽を離れて題材を広げ,叙情文学として発達した。

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世界大百科事典内のの言及

【歌謡】より

…しかし,現在の日本での使い方は,明治以降の日本文学の研究者によるもので,読まれる詩歌に対して,歌われる詩歌を強調することを目的とした。今日では,歌詞と音楽という二分法が一般的であるが,時代や文化によっては,この両者が未分化のままで,歌謡が生みだされることも多いため,文学研究では,この語を拡大して使うこともある。また,日本音楽についての〈歌い物〉と〈語り物〉という現行の二分法からみれば,歌謡は歌い物と重なる面が広いが,定義によっては,語り物の中に多くの歌謡を見いだすことも可能である。…

【詩】より

…文字に記されて残っているものとしては,古代オリエントの《ギルガメシュ叙事詩》や古代インドの二大叙事詩,古代エジプトの〈ピラミッド・テキスト〉や神々への賛歌,古代ギリシアのホメロスの叙事詩,旧約聖書中の韻文テキスト,古代中国の《詩経》などが名高い。日本の場合は,《古事記》《日本書紀》《風土記》などに古代の歌垣や婚姻の歌,国ほめや神ほめの歌が記録されているほか,祝詞(のりと)などの宗教的テキスト,《万葉集》の中の伝承歌謡などがあり,また沖縄の《おもろさうし》や,時代は下るがアイヌ民族の口誦叙事詩群〈ユーカラ〉も知られている。口承文芸
【西欧の詩】
 ひとくちに西欧の詩といっても,ギリシアからローマに至る古代のそれと,中世から現代に至るヨーロッパのそれとは,本来は別個のものと考えるべきだろう。…

【抒情詩】より

…とくに叙事詩,劇詩が衰退した近代・現代においては,詩はほとんどすべて抒情詩とみなすことができるし,抒情詩がすなわち詩を代表しているのが実情である
[ヨーロッパ]
 抒情詩と訳される西欧諸語の源はギリシア語にさかのぼり,リラlyra(竪琴)およびそれに関連するものを表すlyrikosに発している。つまり,この語はまず最初は竪琴にあわせて詩人がうたう歌を指していたのであり,詩人は作詞者であるとともに作曲者,演奏者でもあった。また詩人が合唱団の指揮者となって,宗教,祭祀等々にかかわる集団的感情を表現しようとする民衆を代表する立場に立つこともあった。…

【中国文学】より

…庾信(ゆしん)の〈哀江南の賦〉は多量の典故を用いて,南朝の滅亡をうたった壮大な叙事詩というべき大作であった。
[楽府]
 楽府(がふ)は漢代の宮廷に設けられた役所の名から,その楽人が演奏した曲の歌詞の総称となった。地方の俗謡とそのかえうたを含む。…

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