日本大百科全書(ニッポニカ) 「懸鯛」の意味・わかりやすい解説
懸鯛
かけだい
祝いのときの飾り物の一つ。漁船が沖から帰ってきたとき、漁獲物のなかから2尾の魚を選んで腹合わせに吊(つ)るし、港近くの夷(えびす)様に供える例が西日本に多い。掛魚(かけめ)などという。収穫を感謝し、次の大漁を祈願する行事である。この習俗が内陸や町場にも及び、正月、夷講、祭礼、婚礼その他の祝いに、飾り物として用いられるようになったのであろう。魚の種類は種々であるが、めでたいの語呂(ごろ)合せと姿の美しさから、タイを用いることが多くなった。生ダイが本式であるが、干しダイや塩ダイを用いることもあり、藁束(わらたば)に魚を刺したり、形式化して藁だけのものもある。屋内の神棚の横や前に飾るのが普通である。
[井之口章次]