家庭での祭祀として,屋内もしくはその周辺に神霊をまつる棚のことで,その内容から3分類することができる。(1)ざしきや床の間など家の表の間(ま)に設けられるもの。地方によってはタカダナ,オタナサマなどと呼ばれ,産土(うぶすな)神や伊勢神宮また各所の神符をまつりこめ,往々にしてだるまなどの縁起物を配し,家人に通年拝せられる。(2)台所や寝所など家人が生活している間に設けられ,日常の生活に関与する竈(かまど)神,水神,厠(かわや)神などおのおのが独立の信仰内容をもつ神棚。以上,2種類の神棚は恒常的に家人によってまつられているのが大部分である。(3)ある特定の期間だけまつられる歳神棚,七夕棚,盆棚など年中行事に関与した神棚。またオハケなどと称して神社の祭りの際に,特定の家・期間だけに設けられる神棚もある。
執筆者:宇野 正人 住宅内に神棚が設けられるようになってから,あまり永い歴史はないものと考えられる。全国的に一般化した時期ははっきりわからないが,17世紀後半の檀徒仏教の普及に対して,伊勢神宮の御師(おし)が神符を各戸にくばるという活動を通し,神符をまつる場所として,神棚を設ける習慣が一般化したものと考えられ,江戸時代中期ころではないかと思われる。
→仏壇
執筆者:鈴木 充
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各家庭の屋内に設けられた常設の祭場。その場所としては、座敷や出居(でい)など接客用のハレの場にあるものと、いろり端や台所など家族の生活の場にあるものとがある。神棚には普通、皇大神宮(こうたいじんぐう)(伊勢(いせ))の大麻(たいま)(神符)を中心に、氏神ないし各自崇敬の神々を奉斎し、注連(しめ)縄を張り榊(さかき)を立て、あるいは神饌(しんせん)や灯明を供えるなどして、朝に夕に奉拝する習慣が行き渡っている。日本では神々は、常は山などにおり、祭りに応じて訪れ来るとの信仰が主であったから、常設の祭場は少なかった。貴族の邸宅には早くから宅神、邸内神、屋敷神の祠(ほこら)が設けられ、地方でも神事に関係の深い家筋には、斎屋(いみや)、精進屋、ハナヤ(鹿児島県)など設ける例は多かったが、いずれも別棟である。母屋(おもや)に棚を設けるというのは、新年の年神棚がよく示すように、臨時の祭り場という意味が濃い。
邸宅に持仏堂ないし仏間が設けられたのに比べると、神棚の普及はさらに後れてのことであろう。それが仏壇と並んで民家にあまねく行き渡るようになるのは、近世初頭、皇大神宮の御師によって神符が広く配られるようになったことと深い関係があろう。
[萩原龍夫]
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