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漁船 ぎょせん fishing boat

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

漁船
ぎょせん
fishing boat

漁労に用いる船の総称。カヌーカヤック,磯釣用の小舟から動力船,さらに捕鯨船のような鋼船にいたるまで,その様式,機能は多岐にわたる。漁法の変遷,漁場の拡大に伴って漁船も発達し,現在の遠洋漁業船にあっては,荒天下の出漁を可能とする堅牢さ,高速度,耐波力,魚倉の容積の大きさ,さらに冷凍能力などがきびしく要求されている。

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デジタル大辞泉の解説

ぎょ‐せん【漁船】

漁業とそれに関連する仕事に使用する船。

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百科事典マイペディアの解説

漁船【ぎょせん】

漁業に従事する船の総称。日本では漁船法(1949年公布,1950年施行)で,もっぱら漁労を行う船のほか,漁獲物を保蔵・加工する船(カニ工船など),漁獲物などを運搬する船や漁業試験船,漁業練習船なども含むとしている。
→関連項目漁業無線局

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世界大百科事典 第2版の解説

ぎょせん【漁船】

一般に水産動植物の採捕または養殖など漁業に従事する船をいう。 江戸時代にはカツオ釣りに和船を用いた記録が多く残っており,その長さは3間(約5.4m)ぐらいである。丸木をくりぬいた古代の丸木船より矧船(はぎぶね)をへて1~2枚柵の和船型へ発展したと民族学ではされているが,その時代的な変遷はよくわかっていない。和船の構造は無甲板で,強度は外板,船梁(せんりよう)および戸立(とだて)で保たせ,西洋型のようなキール,肋骨はない。

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大辞林 第三版の解説

ぎょせん【漁船】

漁業に使う船。漁猟船。いさりぶね。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

漁船
ぎょせん
fishing boatfishing vessel

漁業とそれに関連する業務に使用される船舶の総称。通常、漁具を漁場まで運搬し漁労を支援する業務、漁獲物を加工および保管する業務、漁獲物を水揚げ港まで運搬する業務を兼ねて行う。漁業に関連する業務には、試験、調査、指導、練習、取締りなどがある。第二次世界大戦後、ロシア(ソ連時代を含む)は、遠洋漁船、主としてトロール漁船の増強に努め、世界第一等の漁船隊を保有する世界有数の漁業生産国となった。またペルーは、沿岸の豊富な水産生物資源を漁獲するために漁船建造に努め、年間漁獲量世界第1位を記録したこともある。このように漁船勢力の増強は漁獲量の増大に密接につながっている。第二次世界大戦によって壊滅状態となった日本の水産業は、漁場を沿岸より沖合へ、沖合より遠洋へと拡大して、タンパク源の確保と増産に努めた。それに伴って漁船勢力、漁船の装備、漁船が従事する漁業種類、漁獲量などのいずれをみても世界のトップクラスとなり、日本の遠洋漁業は、1970年代前半に生産量の最盛期を迎えた。しかし、200海里漁業水域の設定(1977)、国連海洋法条約の発効(1994、日本は1996年)などにより漁場が大幅に減少するなか、日本は遠洋から沿岸・近海・沖合へと漁業の中心を移行させていく。以下、日本の漁船について述べる。[嶋村哲哉・添田秀男]

漁船に適用される法規

漁船法第2条に漁船の定義が次のように規定されており、漁船とは次の各項に該当する日本船舶をいう。
(1)もっぱら漁業に従事する船舶
(2)漁業に従事する船舶で漁獲物の保蔵または製造の設備を有するもの
(3)もっぱら漁場から漁獲物またはその製品を運搬する船舶
(4)もっぱら漁業に関する試験、調査、指導もしくは練習に従事する船舶または漁業の取締りに従事する船舶であって漁労設備を有するもの
となっている。
 漁船法は、漁船にかかわる重要な法律で1950年(昭和25)に公布された。この法律は、漁船の量的な調整と質的な向上を図ると同時に、漁船の実態を把握して漁業生産の調整を行うことを目的としている。漁船は、この法律の定めに基づいて、根拠地の地方官庁に備えた漁船原簿に登録したのち初めて漁船としての業務に従事できる。
 漁船法施行規則には、漁船の建造、漁船の登録、漁船に関する検査などについて明記されている。
 日本の漁船に適用される法規は、漁船法のほかに、船舶法、船舶安全法、船舶安全法施行規則、小型漁船安全規則、船舶職員及び小型船舶操縦者法などがある。
 船舶法は、日本船舶としての権利と義務を定めている。この法律の適用を受けて登記または登録して国籍証書の交付を受ける。
 船舶安全法は、運航上の安全を確保するために船舶の設備、構造について定めたものである。この法律の定めに従って諸検査が実施され、検査に合格すると検査証書が交付される。
 1974年に農林省・運輸省令第1号で公布された小型漁船安全規則は、船舶安全法の適用が除外されていた総トン数20トン未満の小型漁船に適用される。諸検査に合格すると検査票が交付される。漁船は一般船舶と異なる業務に従事するので、その設備や構造上に特別の配慮が必要となる場合がある。これについて漁船特殊規則、漁船特殊規程、漁船検査規則などの定めがある。
 船舶職員及び小型船舶操縦者法は、運航上の安全確保に必要な乗組員の資格、船内における職務、有資格者の人員数などを定めている。[嶋村哲哉・添田秀男]

漁船の登録

漁船の登録は、総トン数1トン以上のすべての漁業種類の動力漁船、無動力漁船の所有者が行う義務がある。登録が完了すると漁船登録票が交付されるが、この登録票はかならず船内に備えていなければならない。また、登録票に記載されている登録番号を外から見えやすい船体の両舷に表示しなければならない。この表示が、たとえば「TK2-12345」であるとすると、はじめのローマ字2文字は都道府県名を表し、次の数字は漁船の区分された等級(以下に列挙する(1)~(7)に区分された等級)を示し、その次の数字は各級での通し番号となる。漁船の等級基準は以下のように定められている。
(1)総トン数100トン以上の海水動力漁船
(2)総トン数100トン未満5トン以上の海水動力漁船
(3)総トン数5トン未満の海水動力漁船
(4)総トン数5トン以上の海水無動力漁船
(5)総トン数5トン未満の海水無動力漁船
(6)淡水動力漁船
(7)淡水無動力漁船
したがって、前記の「TK2-12345」の場合は、東京都に登録された総トン数5トン以上100トン未満の海水動力の漁船で、登録番号12345番目の船であることを意味している。[嶋村哲哉・添田秀男]

漁船の種類および勢力

漁船特殊規則では、20トン以上の漁船を第1種から第3種、20トン未満の漁船を小型第1種、同第2種に区分して、各区分の漁船が従業できる漁業種類などを定めている。推進機関を装備しているか否かによって動力漁船と無動力漁船とに分類される。動力漁船が装備する推進機関の種類には蒸気機関、ディーゼル機関、焼き玉機関、電気点火機関がある。蒸気機関を装備する漁船は1976年(昭和51)以降登録されていない。焼き玉機関を装備する漁船は年々減少し、電気点火機関を装備する漁船もほとんど使われておらず、ディーゼル機関を装備する漁船がほぼ100%を占めている。無動力漁船は隻数およびトン数ともに年々減少している。船質によって大きく区分すると鋼船、木船、FRP船(ガラス繊維強化プラスチック加工船)、アルミ合金船に分類される。FRP船は、比較的安価で建造でき、軽量で腐食しないことから1970年代から急速に普及した。しかし、代替船建造などで不用になった船の廃棄処理方法あるいはリサイクルのむずかしさから急増する廃船の不法投棄などが社会問題化しており、2001年(平成13)から実施されている国土交通省の「FRP廃船高度リサイクルシステム構築プロジェクト事業」の研究成果を踏まえて自治体あるいは関連企業・団体がリサイクル・再利用技術の確立およびシステムの事業化を目ざしている。アルミ合金船は1980年代後半から増加している。軽量で腐食せず、容易にほぼ100%の再生処理が可能である利点がある。また、1990年代後半にはチタン製の漁船が建造されている。木船の登録数は著しく減少している。[嶋村哲哉・添田秀男・吉原喜好]

漁船の構造および装備

漁船は一般船舶に比べ、運用上、他船、岩礁、海底構造物あるいは岩壁との激しい接触や漁具による衝撃を受けることが多い。また、操業中の船内重量配置の大きな変化、海象・気象条件が悪い海域での操業などの過酷な条件に耐えなければならない。したがって、構造上特別の配慮が必要である。魚艙(ぎょそう)、氷艙、活魚艙(かつぎょそう)、燃料油艙、清水艙、乗組員の居室、賄室、その他の区画、および推進機関、各種機器、漁労設備、その他の設備の大きさ・位置が、従業する漁業種類用途に対して重心位置、喫水(きっすい)、およびトリム(船首喫水と船尾喫水との差)が適切であるように定められている。
 漁船漁業に従事する漁船は、海上を移動する構造物としての一般船舶と同じ機能と、漁労行為を支援するのに必要な副漁具としての機能を兼ね備えていなければならず、したがって、漁船が装備する機器は、海上移動に必要な運航機器と、漁労作業上必要な漁業機器とに大別できる。しかし、運航機器もその多くは漁労作業上欠くことができない装備である。
 漁船に装備される運航機器は、その性能、信頼性、種類などにおいて最新鋭の一般船舶に匹敵するものである。漁業機器は、船体の風浪暴露部に装備され、管理面の配慮が十分に行えない場合がある。また、漁業機器の設置環境条件や使用条件が過酷である場合が多い。したがって、堅牢(けんろう)で、性能、信頼性に優れた機器の装備が重要である。
 漁船は、従業する漁業種類によって、出漁する海域、使用する漁具、漁法など操業条件が異なる。したがって、装備する機器は、操業する漁業種類に適応したものでなければならない。たとえば、500トン級の漁船が装備するおもな機器は、運航機器として磁気コンパス、ジャイロコンパスなどのコンパス類、方向探知機(無線方位測定機)、ロラン航法装置、衛星航法装置、レーダー、衝突予防装置、潮流計、推進機関、無線通信機、ファクシミリなど、漁業機器として魚群探知機、ソナー、ネットホーラー、ネットレコーダー、トロールウィンチ、荷役ウィンチなどのウィンチ類、ベルトコンベヤー、冷凍設備などである。
 各種漁船の装備をみると、運航機器では電波航海機器の普及が顕著である。電波航海機器は主として船位決定を支援するもので、次の三つに分類できる。(1)目標の方位を測定する方向探知機、(2)電波の伝搬時間を利用したロラン航法装置、デッカ航法装置、オメガ航法装置、衛星航法装置、(3)目標の方位と距離を測定するレーダーである。陸地を視認して航海する地文(ちもん)航法、天体を観測して得た位置の線を利用する天文(てんもん)航法は、船位決定に際して一定の条件を必要とするが、電波を利用する電波航法では各種機器の性能の範囲内で任意のときに船位決定ができる。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)が普及し、海上を航走する部分においてはすべての航法以上の性能を発揮できるが、衝突予防という観点から沿岸域を航海する場合や他船との位置関係を把握するためには他の電波機器(レーダーなど)を併用する必要がある。漁船の電波航海機器の装備は航海の安全性や経済性の向上と同時に、操業位置の確定あるいは操業効率の向上に貢献している。通常、漁業種類による運航機器の装備に大きな違いはない。漁業機器では魚群探知機、冷凍(冷蔵)設備はあらゆる漁業種類に欠くことができない装備である。漁業種類ごとに特有の装備をいくつかあげてみると、トロール漁船のトロールウィンチ、ネットレコーダー(底引網に取り付け、網の位置や魚の入網状況を船上に伝える装置)、巻(旋(まき))網漁船のパワーブロック(動力滑車)、環巻ウィンチ、マグロ延縄(はえなわ)漁船においてはラインホーラー、ブラン巻機、投縄機、主縄(おもなわ)(幹縄(みきなわ))収納機などがある。これらの装備は漁労作業の機械化および省力化に貢献して操業効率を著しく向上させた。
 漁船は、漁具や漁法の開発、漁場条件の変化に対応して巧みに構造、装備を改良されてきた。その主たる目的は操業効率の向上あるいは採算性の向上にあった。1973年(昭和48)の第一次石油危機以降、それまでの構造や装備が操業効率の向上に偏重し、採算性に対する配慮が不十分であったことが反省され、操業効率と採算性とともに省人化に配慮した各種漁船の構造や装備の改良がなされた。[嶋村哲哉・添田秀男・吉原喜好]

各種の漁船

巻網漁業、トロール漁業、マグロ延縄漁業は漁業種類別の年間漁獲量が上位にあり、従業する漁船には小型のものから大型のものまである。[嶋村哲哉・添田秀男]
巻網漁船
巻網漁業は、表層を回遊して濃密な魚群を形成するイワシ、アジ、サバ、カツオ、マグロなどを帯状の網で取り囲んで漁獲する漁業である。この漁業には、日本で発達した揚繰(あぐり)網に外国の巾着(きんちゃく)網の着想を加味した漁法と、アメリカ式巾着網漁法とがある。ここでは前者を日本式漁法、後者をアメリカ式漁法という。
 日本式漁法は、通常、もっぱら魚群の探索・集魚に従事する魚探船、灯船(2~3隻)、漁具を搭載して漁労作業だけを行う網船(1~2隻)、漁獲物の運搬に専従する運搬船(2~3隻)による船団操業を行う。船団の編成は地方によって若干の違いはある。魚探船、灯船は50トン以下、網船、運搬船は100トン以上の船型のものが多い。アメリカ式漁法は大型船による単船操業である。船の規模は数トンから500~3000トン級のものまで幅広いが、500トン級の船型のものが多い。徹底した省力化による高い生産性が評価され、昭和40年代の後半(1970~1974)以降急速に発達した。1971年(昭和46)に建造された日本丸(1000トン)が国産のアメリカ式巻網漁船の第一号船である。
 日本式漁法の網船は一層甲板型であり、アメリカ式巻網漁船は二層甲板型のものが多い。どちらの場合もおもな漁労作業が船尾甲板で行われるので、船首船橋にして船尾に広い作業甲板を確保している。船尾甲板はフラットであって漁具操作上海面からの高さが低いことが望ましい。船型が大きいアメリカ式巻網漁船では船尾が斜路(スリップウェー)となっている。網船は、船尾に長いブーム(張り出し竿)と、ブームの先端にパワーブロックを装備している。長いブームとパワーブロックは巻網漁船にとって重要な装備であるが、操業中、ブーム、パワーブロックの自重に加えて漁具および漁獲物の重量が船体に大きな傾斜モーメントとして作用する。したがって、船体の復原偶力の確保に慎重な配慮が必要である。アメリカ式巻網漁船には、操業中の操船を支援するバウスラスター(横向きプロペラ)の装備、魚群探索のためのヘリコプターや水上飛行艇の搭載が可能な船もある。[嶋村哲哉・添田秀男・吉原喜好]
トロール漁船
トロール漁業は、袋状の網を曳(ひ)き回す引網漁業のうち、開口板(オッターボード)を取り付けた漁具を使用する漁業である。おもに海底または海底付近に生息する底魚(そこうお)類(タイ、ヒラメ、カレイ、ニベ、タラなど)を漁獲する。開口板を改良した中層引きもある。袋状の網を曳き回す漁業は、ヨーロッパにおいては17世紀末すでに地中海、バルト海で盛んに行われ、日本においては古くから各地の沿岸で小規模のものが行われた。この漁業の漁獲成績は漁具の網口の開口状態によってほぼ決まる。良好な網口の開口状態を確保するために考案されたのがオッターボードである。ヨーロッパにおいて1892年(明治25)オッターボードの実用化が成功したことによって、トロール漁業はほかの引網漁業に対して優位にたった。1908年(明治41)長崎の倉場富三郎(くらばとみさぶろう)(1870―1945)が、イギリスから深江丸(鋼船、169トン)を購入すると同時にイギリス人の技術者を雇用した。これが日本のトロール漁船の第一号船である。日本では数少ない外国からの技術導入漁業として始まったトロール漁業は、漁獲成績がよいので急速に着業数が増えてトロール・ブームを生んだ。しかし、トロール漁船による大量漁獲は漁場の荒廃、資源の枯渇を招き、ほかの沿岸漁業との紛争のもとになった。そこで政府は1909年に制定したトロール漁業取締規則を逐次改定した。これによってトロール漁船の漁場は、内地沿岸、朝鮮半島沿岸から東シナ海、黄海(こうかい)の大陸棚に移行した。しかし、漁場を遠隔化するには、当時の漁船では航続距離、漁獲物の船内保蔵設備などの能力が不十分であった。1917年(大正6)の法律改正では、トロール漁船を総トン数200トン以上、速力11ノット以上、航続距離2000海里以上と定めている。その後も、トロール漁船と二隻引機船底引網漁船との漁場の競合があり、トロール漁船は大型化と冷凍装置の装備によって第二次世界大戦前は漁場を南米アルゼンチン沖、ベーリング海、その他の海域に拡大した。しかし、1977年の国際海洋法会議で設定された200海里排他的経済水域によって、漁場の拡大は終焉し、操業水域はごく限定されるようになった。当時のトロール漁船には1000トン級のものもある。これは一層甲板で船橋は甲板室型、舷側(げんそく)の船首と船尾寄りにオッターボードを収納する装置を備えて投揚網する舷側式トロール漁船である。
 トロール漁船の技術革新は第二次世界大戦後に訪れた。すなわち、イギリスで開発された船尾式トロール漁船の出現である。船尾式トロール漁船は、船尾に斜路を設けて船尾から投揚網を行う。この方式によって、漁獲物の船内完全加工処理と長期航海を行い、漁獲物の付加価値の向上と稼動率の増大による生産性の向上を図った。漁獲物処理工場、冷凍装置、フィッシュミール装置などを装備するために、二層甲板型を採用している。また、この方式は、操業能率を高め、舷側式トロール漁船が漂泊して風浪を舷側から受けながら投揚網することによる船体や乗組員に対する危険を著しく減少した。大型船に船尾トロール方式が普及するとともに、小型船に適した船尾トロール方式が開発された。これによって舷側式トロール漁船は大型船、小型船ともに姿を消した。1955年(昭和30)に建造された東京水産大学(現東京海洋大学)の練習船海鷹(うみたか)丸(1453トン)が日本の船尾式トロール漁船の第一号船である。[嶋村哲哉・添田秀男・吉原喜好]
マグロ延縄漁船
マグロ延縄漁業は、1本の長い主縄(幹縄)に釣り針を着装した多数の枝縄を取り付けた漁具を用い、表層や中層を回遊する主としてマグロ類やカジキ類を捕獲する漁業である。日本古来の伝統漁業で、第二次世界大戦後急速に発展した。従業する漁船は20トン未満の小型船から500トンを超える大型船まで多くの船級がある。船級に応じて、沿岸、近海から太平洋、インド洋、大西洋のほぼ全域、オーストラリア南方海域にも出漁している。この漁業の特徴の一つは、100トン以上の船級では1回の操業に使用する釣り針数(漁獲努力量)に著しい差がないことである。これは、直接的な漁獲能力が船級に関係ないことを物語っている。
 100トン未満の小型船には、甲板室型の船橋を船の中央部付近に設けた一層甲板型船がある。100トン以上のものはほとんど長船尾楼型を採用している。漁具は船尾から投入され、上甲板船首寄りの右舷側に備えたラインホーラーによって収揚される。おもな漁労作業は船橋前の上甲板で行われる。上甲板は海面からの高さが低いことが望ましい。漁具投入の際に追波(おいなみ)や横波が船内に打ち込む危険の防止、漁獲物の品質保持に必要な急速冷凍装置の装備に長船尾楼型船は適している。大西洋やオーストラリアの南方などの高緯度海域は、海象・気象条件が著しく悪い場合が多い。荒天操業時の船体や人命の安全を確保する船型として、船首に船橋を設けた二層甲板型の船が一時建造されたが、長船尾楼型船の船首楼に船尾方向に広がる覆甲板を設け、ブルワークを高くして上甲板への波浪の打ち込みを防ぐようにしたものが多く採用されている。遠洋マグロ延縄漁業の漁場も第二次世界大戦後急速に拡大したが、資源保護あるいは海洋権益の観点から操業水域あるいは漁獲量、漁獲努力量に制限を受けるようになった。[嶋村哲哉・添田秀男・吉原喜好]
『茶碗谷洋編『水産資材便覧 漁船船体編』(1972・北海水産新聞社) ▽稲村桂吾著『水産学全集5 漁船論』(1973・恒星社厚生閣) ▽川島利兵衛他編『新水産ハンドブック』(1981・講談社) ▽赤羽正春著『日本海漁業と漁船の系譜』(1998・慶友社) ▽二野瓶徳夫著『日本漁業近代史』(1999・平凡社) ▽若林良和著『水産社会論』(2000・御茶の水書房) ▽津谷俊人著『日本漁船図集(4訂版)』(2001・成山堂書店) ▽海難審判庁編・刊『漁船海難の実態』(2001)』

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