日本大百科全書(ニッポニカ) 「抄繊織物」の意味・わかりやすい解説
抄繊織物
しょうせんおりもの
基本的には、紙を抄(す)いたものを、細く裁断して撚(よ)りをかけ、紙糸とした抄繊糸を使って織った織物をいうのであるが、しだいにその意味内容を異にすることになる。原料としては、コウゾ(楮)、ミツマタ(三椏)、木材パルプ、屑(くず)繊維など、繊維として利用できるあらゆるものが使われることになる。大正の初めごろ、セル引きの紙糸の製造が行われ、これをパナマ帽の代用材料として用いることから、工業化が開始されたのであるが、物資の不足の時代には、織物の代用糸として盛んに利用された。抄繊糸は繊維がなるべく縦方向を向くように、裁断してテープ状にして撚りをかけ、これを樹脂加工したものであるが、織物にするときに、強度を増加することと外観に変化を与えるため、経糸(たていと)に綿糸・絹糸・合繊糸などと交織することがあるが、その方法は普通の織物と変わりはない。夏帯地、芯地(しんじ)、着尺地、シャツ、帽子帽体、ふとん袋、基布、袋物、椅子(いす)張りの布などに用いられてきた。
[角山幸洋]