… 親子成りが行われる契機には二つあり,第1は出産,命名,成人,結婚など通過儀礼の諸段階に行われるものであり,こうしてとった親に取上親,名付親,元服親,仲人親などがある。第2は拾い親,草鞋親のように通過儀礼の段階にはとくに関係なく,子どもが病気がちでよく育たないとか,新しく村に転入してきた場合に行われるものである。しかしいずれの場合にあっても,親子成りはある人間が新しい社会的状況に直面したときに行われるのが特徴である。…
…ムラ人が親分を得てその子分となる機会は,人生の通過儀礼の節目ごとに見いだされえた。出生時に頼む〈取上親〉〈名付親〉,また病弱な子を儀礼上いったん捨て子する形をとり,あらかじめ頼んでおいた人に〈拾い親〉になってもらうことによって健康な子になると考える風習もあったが,最も一般的には,成人するとき男は烏帽子親(えぼしおや),女は鉄漿親(かねおや)を頼み,また結婚するときに仲人親を頼むというように,仮親に依存することであった。ムラや生まれ育ったマチを離れ,生家を離れて他のマチの商家や職人の家の家長を親方とすることは,子飼い住込みの丁稚(弟子)奉公人となるときに,その家の子方となることを意味した。…
…四十二の二つ子などといって親の厄年に生まれた子供や,鬼子と称し歯の早く生えた子や異形な容姿をした子供,また病弱な子や子育ちの悪い家の子供などを辻や川に捨て,あらかじめ頼んでおいた知人や通行人に拾ってもらい再びそれを実の親が引き取るものである。この拾い手を拾い親・辻親と呼び,仮親の関係を結んで命名や将来の庇護を依頼したり,捨松など子の名前に捨の字を付けたりする場合もある。この習俗は厄など親の悪条件が子に移らぬようかりに親子の縁を切り子どもの健全な成育を願った呪的な儀礼であるが,また捨てられる子供はいずれも普通の子どもとは何かしら異なったスティグマ(聖痕)を負った者たちであった。…
※「拾い親」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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