日本大百科全書(ニッポニカ) 「捻文」の意味・わかりやすい解説
捻文
ひねりぶみ
古文書学上の用語。中世の書札様(しょさつよう)文書にあっては、本紙(ほんし)・礼紙(らいし)に封紙(ふうし)を加え、相手方に届けるのが普通であるが、封紙を省略して、本紙・礼紙または本紙一紙の場合もあった。このときの封じ目の加え方としては、切(きり)封・捻封・結(むすび)封の三つがあるが、本紙・礼紙に切封をし、宛所(あてどころ)・差出書の上書(うわがき)を書いたものが腰文(こしぶみ)である。これに対して、本紙を折り畳んで、その上部を捻り、上書を書いて封じ目を加えたのが捻文である。『貞丈雑記(ていじょうざっき)』巻之九には、「今時のひねり文は頭ばかり捻る。又礼紙表巻もなし。古の法とは大なる違也(なり)」とみえ、古くは文書の上部だけではなく下部も捻り、また本紙・礼紙の二紙を捻ったかに書かれているが、それは実際問題として不可能である。なお、捻るというのは、文書を水平に180度回転させることではなく、まず筋かいに左に折り、ついで右に折って、その後、裏のほうに折り返すことであって、その折り目に沿ってこよりをかけて結んで相手方に届けるのである。
[上島 有]