(読み)ふう

精選版 日本国語大辞典 「封」の意味・読み・例文・類語

ふう【封】

〘名〙
[一] 文書・箱・袋など、また、出入り口などを閉じふさぐしるし
① 閉じふさいだしるしとして、結び目・封じ目に付ける文字・記号・印判など。封印。
霊異記(810‐824)中「宗の僧等、銭器を見るに封誤たず。開き見れば」
② 封じ目に記す「封」の文字。
延喜式(927)一二「凡賜渤海国勅書凾、臘上書封字
③ 封じた所。封じ目。結び目。
平家(13C前)一一「さて女房件(くだん)のふみの事をの給ひいだしたりければ、判官あまつさへ封をもとかず」
④ 手紙など包んで封じたもの。封書。
空華日用工夫略集‐貞治六年(1367)一二月一六日「天龍春屋此外僧俗十余封」
[二] 化身などを、姿を現わすことができないように、封じこめること。
江談抄(1111頃)三「鬼物伺来、吉備作隠身之封
[三] ⇒ふ(封)

ふう‐・ずる【封】

〘他サ変〙 ふう・ず 〘他サ変〙
① 封をする。
※延喜式(927)一二「凡封駅伝勅符式、〈略〉内記、主鈴封凾、官吏発遣」
古今著聞集(1254)五「歌を書きて封じておきて退出せられにけり」
② とじこめる。封じこめる。
※霊異記(810‐824)中「開き見れば唯銭四貫无し。怪しびて蔵に封ず」
③ 神仏の力によって活動させないようにする。
※十訓抄(1252)一〇「龍の泣くぞと思ひて、心に龍の声とどむる符を作りてこれを封じてけり」
④ ある行動や、そのための手段を禁ずる。禁止する。
歌舞伎天衣紛上野初花河内山)(1881)序幕「承はれば、お宿への使ひは封(フウ)じてあるとやら」

ほう‐・ずる【封】

〘他サ変〙 ほう・ず 〘他サ変〙
① 土を高く盛る。土を盛って境を設ける。
※常山文集(1718)二〇・梅里先生碑陰「瘞歴任之衣冠魚帯、載封載碑、自題曰梅里先生墓
② 領地を与えて諸侯とする。領主にする。
※葉子十行本平家(13C前)六「男は是侯にだも封ぜられず」
③ 封(ふう)をする。とじる。
※和漢朗詠(1018頃)上「池の凍の東頭は風度って解く 窓の梅の北西は雪封じて寒し〈藤原篤茂〉」

ふ【封】

〘名〙
封戸(ふご)食封(じきふ)のこと。令制で、特定の課戸を指定して租・庸・調を収取し、これを祿とすること。また、その制度みぶ
続日本紀‐文武三年(699)六月戊戌「施山田寺封三百戸。限卅年也」
② =ふう(封)名語記(1275)〕
日葡辞書(1603‐04)「Fuuo(フヲ) ツクル、または、ナス

ふう‐じ【封】

〘名〙 (動詞「ふうずる(封)」の連用形の名詞化)
① 封をすること。封じること。
※洒落本・自惚鏡(1789)「口のはたのめしつぶを取『こりゃあ封(フウジ)をする時のよふじんさ』」
② 封のしてあること。また、その部分。封じめ。
※天草本平家(1592)四「アマッサエ fǔjiuomo(フウジヲモ) トカイデ トキタダキャウエ ヲクラレタ」
③ 神仏の通力で活動させないようにすること。

ふう・じる【封】

〘他ザ上一〙 (サ変動詞「ふうずる(封)」の上一段化したもの) =ふうずる(封)
※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉友達「自分は此手紙を封(フウ)じる時、漸く義務が済んだやうな気がした」

ほう【封】

〘名〙 =ふ(封)
※阿部一族(1913)〈森鴎外〉「忠広が封(ホウ)を除かれた時」 〔史記‐酈生伝〕

ふん‐・ず【封】

〘他サ変〙 「ふうず(封)」の変化した語。
※蜻蛉(974頃)中「ふんじて、うへにいみなどはてなんに」

ふう‐・ず【封】

〘他サ変〙 ⇒ふうずる(封)

ほう‐・ず【封】

〘他サ変〙 ⇒ほうずる(封)

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デジタル大辞泉 「封」の意味・読み・例文・類語

ふう【封】[漢字項目]

常用漢字] [音]フウ(呉) ホウ(漢)
〈フウ〉
出入り口をふさぐ。閉じ合わせる。「封緘ふうかん封鎖封入完封厳封密封
閉じ合わせた箇所。封をしたもの。「封書封筒開封同封金一封
野球で、進塁させないこと。「封殺
〈ホウ〉
領土を与えて領主にする。「封建冊封さくほう
領土。「封地封土移封爵封分封素封家
[名のり]かね
[難読]食封じきふ封度ポンド

ふ【封】

封戸ふこ」に同じ。
ふう(封)1」に同じ。
「―ヲツクル」〈日葡

ほう【封】

諸侯・大名の領地。封地。封土。
「忠広が―を除かれた時、伝左衛門とその子の源左衛門とが流浪した」〈鴎外阿部一族

ふう【封】

文書・袋・箱などを閉じふさぐこと。また、その閉じた部分。「をする」「を切る」
閉じふさいだ部分につけるしるし。「〆」「封」「緘」などの文字を記す。

ほう【封】[漢字項目]

ふう

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改訂新版 世界大百科事典 「封」の意味・わかりやすい解説

封 (ふう)

あるものを空間的に閉じこめ,内外の空間の間の相互干渉を遮断するためのしるし。この空間は,文書の封のように物理的に設定されたものもあれば,たとえば地震鯰を封じこめるために鹿島神宮の要石によって作られたそれのように,呪術的に設定されたものもあった。文書の場合,現在の封筒のようにして作られた空間の封じ目に,〆や封などのしるしを印判や手書きで加えることによって封が完成するが,このしるし自体に空間を守る呪力がそなわっており,したがって封印で守られる空間も単なる物理的なそれではないと意識されていたところに,前近代の封の特質がある。文書の封のもっとも簡単なものは,何個もの押印によってすき間なく字面をおおうことにより,文字の改変を防いだ,律令制における公文書の例がある。中世では,訴状の裏に裁判担当者が花押(裏判(うらはん))を加える〈裏を封じる〉方式が出現したが(裏封),これも訴状のすりかえを防止するという意味で封の一種といえる。近世の目安裏判も同様の慣行である。また文書の紙継目に,文書の改変を防止するためにすえられた印や花押は,封印または封判と呼ばれていた。近世になって発達した割印,押切印,千鳥印なども,この継目裏印の延長として理解できよう。継目裏印には〈五大力菩薩〉の印文をもつものがあり,封印に呪力が期待されていたことを物語っている。〈封じ目菩薩〉と呼ばれることもあったこの名号は,戦国から江戸時代にかけて書状の封じ目に書かれることがあったが,これは封じた内容を改変から保護する力がこの菩薩にあると信じられていたからである。封を加える空間の作り方には,書状の場合,古くから切封,結封,捻封(ひねりふう),折封などの封式があった。これらは,書状本体あるいは書状の包紙(封紙)の折り目や結び目に封を加えるもので,糊を使わないのが原則であったが,17世紀中葉から糊封も出現し,さらに江戸時代の末には現在の封筒のような封式も使用されるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「封」の意味・わかりやすい解説


ふう

古文書学上の用語。封とは、厳密には、文書が受取人に届くまでに開けられないように、封じ目を加えることであるが、広くは、文書の折り方、封の仕方を含めて封式という。書札様(しょさつよう)文書は、普通、本紙(ほんし)・礼紙(らいし)・封紙の三紙からなり、本文は本紙一紙に、または本紙・礼紙の二紙に書く。その後、本紙・礼紙を背中合わせにして重ね、左から折り畳み、それを封紙に包み、上書(うわがき)として宛所(あてどころ)・差出書を書き、折(おり)封・捻(ひねり)封・糊(のり)封(糊封は主として近世)などの封をして相手方に届ける。これが正式な場合であるが、ときには封紙を省略し、本紙と礼紙、あるいは本紙一紙だけで相手方に送ることもある。この本紙または本紙・礼紙に封じ目を加える方法としては、切(きり)封・捻封・結(むすび)封の三つがある。切封・捻封は広く中世にみられる。結封は一部正倉院(しょうそういん)文書にもその例をみるが、近世に多くみられる。中世の書札様文書にあっては、私的な性格の強い文書には封じ目を加えるが、公的な文書にはみられない。

[上島 有]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【封建法】より

…領主・農民の関係についての荘園法や,主人とミニステリアーレとの関係についての家人法を含む意味に用いられることもないわけではないが,普通には,封建主君と封建家臣との間の人的な関係,および両者の間に授受される〈封〉をめぐる物的な関係を規律する法体系を封建法と呼ぶ。レーン法とも呼ばれる。…

【封禅】より

…中国の帝王がその政治上の成功を天地に報告するため,山東省の泰山で行った国家的祭典。〈封〉と〈禅〉は元来別個の由来をもつまつりであったと思われるが,山頂での天のまつりを封,山麓での地のまつりを禅とよび,両者をセットとして封禅の祭典が成立した。《史記》封禅書には,春秋斉の管仲のことばとして,有史以来,封禅を行った帝王は72人,そのうち管仲の記憶するところは12人であること,天命を受けたうえで封禅は行われること,封禅を行うためには祥瑞(しようずい)の出現が必要であること,が述べられているけれども,後世における仮託の説であろう。…

【手紙】より

…また材料の帛(きれ)により尺素というが,尺は紙の大きさを示すことから,短い文,手紙を意味する。手紙は公文書の,伝達様式によるいろいろの名称に対し(古文書(こもんじよ)),私的な対人間の音信文を指していい,現今では郵便はがきに対して,封書を指していうことが多い。
[文体と様式]
 文字のない時代,相手に用件を伝える場合は使者に口上(こうじよう)を述べさせたが,手紙は漢字の伝来とともにもたらされ,漢文の書札様式がそのまま用いられた。…

※「封」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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