日本大百科全書(ニッポニカ) 「こより」の意味・わかりやすい解説
こより
こより / 紙縒
和紙を細長く切ってよりをかけ、糸のようにしたもの。最初は麻紐(あさひも)の代用としてつくられていたようで、正倉院の宝物中に遺品がみられる。室町時代末期の『日葡(にっぽ)辞書』に、「かみより」と「こうより」の両発音があげられていることから、「こより」の呼称はそれ以後の江戸時代に定着したとみられる。また『今昔物語集』『宇治拾遺物語』『名将言行録』などに、こよりのさまざまな使い方が描写されている。
こよりを米糊(こめのり)で加工した元結(もとゆい)は髪を結うときの必需品であり、また色彩を施した水引(みずひき)は現在も儀礼用に使われている。こよりを二筋より合わせたものを一般に観世縒(かんぜより)というが、能楽師の観世太夫(だゆう)(世阿弥(ぜあみ))をその創始者あるいは命名者とする俗説には確証がない。観世縒で徳利(とっくり)、水筒、盆、膳(ぜん)、卓、行李(こうり)、笠(かさ)、印籠(いんろう)、たばこ入れなどをつくって漆で塗り固める細工は朝鮮半島から渡来した技術で、江戸時代に家内工芸として流行した。
[町田誠之]