播姫太平記(読み)ばんきたいへいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「播姫太平記」の意味・わかりやすい解説

播姫太平記
ばんきたいへいき

1748~49年(寛延1~2)の姫路藩全藩一揆(いっき)の代表的実録文学。12巻。藩主を無法国主と罵倒(ばとう)し、「高き城にのぼりて見れば名残(なごり)惜しや 民のかまどにまだ金がある」といわせる落首をのせ、藩の討伐隊が農民の側の巧妙な戦術によって完敗するありさまを描いているなどで、有名である。黒装束の前髪(まえがみ)若衆が大庄屋打毀(おおじょうやうちこわし)に先だち、その罪状を宣告し、百姓家への乱妨(らんぼう)、田畑踏み荒らし、金品盗奪を禁ずるなどの規律を布告したとするのも、同種の記事のごく早いものである。本書は、『播陽多我身飢(ばんようたがみのうえ)』(神戸市立図書館蔵)ないし『播陽誰身上(たがみのうえ)』(慶応義塾図書館幸田文庫蔵)をいくらか布衍(ふえん)したものであるが、忌諱(きき)に触れる記述を省略し、攻撃の鉾先(ほこさき)を藩ないし藩主から、個々の悪臣のほうに転ずる傾向を示している。

[林 基]

『川島右次編『校訂播姫太平記』(1930・播磨書史会)』『『兵庫県史 第4巻』(1979・兵庫県)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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