救いを求める女たち(読み)すくいをもとめるおんなたち(その他表記)Hiketides

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「救いを求める女たち」の意味・わかりやすい解説

救いを求める女たち
すくいをもとめるおんなたち
Hiketides

(1) アイスキュロス作のギリシア悲劇。失われた『エジプト人』 Aigyptioi,『ダナオスの娘たち』 Danaidesとともに3部作をなした。ダナオスの 50人の娘たちは,従兄弟にあたるアイギュプトスの 50人の息子たちとの結婚を避けて,父とともにエジプトから祖先の地アルゴスに逃れて保護を求める。アルゴスの王ペラスゴスは市民にはかって保護を決定し,引渡しを要求するエジプトの傲慢な使者を追返す。嘆願者たちの合唱隊の歌が全体の半分以上を占め,形式的には抒情詩の時代の名残りが濃厚なので,従来,現存する最古の作品と考えられたが,近年発見された新資料では,むしろ詩人後期の作品に数えられている。 (2) エウリピデス作のギリシア悲劇。前 420年頃初演。テーベの王クレオンは,テーベを攻撃して戦死したアルゴスの7将の埋葬を禁じた。7将の母たちは,テーベ攻撃軍の総大将だったアルゴス王アドラストスとともに,アッチカエレウシスデメテルの神殿の前で,アテネ王テセウスの母アイトラに嘆願して,埋葬のための助力を求める。テセウスはテーベからの傲慢な使者を追返し,軍勢を率いて遺体を収容する。火葬の薪が燃上がったところへ,7将の一人カパネウスの妻エウアドネが現れ,父イピスの制止もむなしく,夫の屍を焼く火の中に身を投げる。わが子を亡くした母たちの嘆きが全編に満ちている。

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世界大百科事典(旧版)内の救いを求める女たちの言及

【アイスキュロス】より

…《縛られたプロメテウス》は《解放されるプロメテウス》《火をもたらすプロメテウス》と続く三部作の最初のものとされ,神々が独占していた火を人類に与えた罪で岩山に磔(はりつけ)にされた神の苦難を描く。《救いを求める女たち》は,1952年発表のパピルス資料により前463年ころのものと考えられる。コロスを中心として2人だけの俳優が同時に登場する古悲劇の特徴のために,従来古い年代のものと考えられていた。…

【ダナオス】より

…後代の伝承では,このときただひとり夫リュンケウスLynkeus(のちアルゴスの王位を継ぎ,英雄ペルセウスの祖となった)を殺さなかったヒュペルムネストラHypermnēstraを除く49人の娘は,死後,冥府で穴のあいた甕に水を満たす永劫の罰に服しているという。ダナオスとその娘たちの話は,アイスキュロスの悲劇《救いを求める女たち》によって有名。【水谷 智洋】。…

※「救いを求める女たち」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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