アルゴス(読み)あるごす(英語表記)Argos

翻訳|Argos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルゴス」の意味・わかりやすい解説

アルゴス
Argos

ギリシアペロポネソス半島北東部のアルゴリス地方の中心都市。中期青銅器時代から人が住み,ミケーネ期に隆盛をみた。前 1100~1000年ドーリス人がここを基地に半島へ侵入したと推定される。前8世紀頃からスパルタ抗争,前 669年これを破って半島の度量衡を統一したが,スパルタの力が伸びるにつれて,アテネコリントテーベと次々に結んで対抗した。テーベが衰えるとマケドニアフィリッポス2世の支援を求め,前 229年にはアカイア連盟に加盟。前 146年のローマのコリント破壊で相対的に重要性を増し,アカイア連盟の中核となった。3世紀後半頃一時ゴート人に占拠されたが,ビザンチン時代には繁栄。 1204年フランク人のアカイア王国建設でアルゴスは衰退した。 14~15世紀にトルコ人に侵入され,住民はアルバニア人と入れ替わった。 19世紀のギリシア独立戦争で最初の自由議会がアルゴスに招集された。現在は人口が2万 2256 (1991推計) の都市。

アルゴス
Argos

ギリシア神話怪力巨人身体中に 100の目をもち,その半分が眠っても,残りの 50の目は目ざめていたという。アルカディア地方を荒した雄牛を退治し,その皮をはいで自分衣服の代りにしたり,女怪エキドナを殺すなど,多く手柄をあげたが,雌牛に変えられたゼウスの愛人イオの見張りをヘラに命じられたために,ゼウスに派遣されたヘルメスによって殺された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルゴス」の意味・わかりやすい解説

アルゴス(都市国家)
あるごす
Argos

古代ギリシアのアルゴリス地方のポリス(都市国家)。神話伝説の世界で重要な位置を占め、ミケーネ時代にアカイア人の手でアクロポリスに城砦(じょうさい)が築かれた。紀元前1100年ごろドーリス人の支配に移り、ポリス成立後、前7世紀の王フェイドンPheidōnのもとで繁栄の頂点に達した。以後はペロポネソス半島の覇権をめぐる争いにおいてスパルタに押されるようになり、ペルシア戦争の際はペルシアに好意的な中立の立場をとり、前5~前4世紀にも何度かスパルタと戦ったが、昔日の勢力を回復することはできず、前146年ローマの属州に組み込まれた。

 今日のアルゴスはアルゴリス県に属し、牧畜とタバコ生産を主産業とする人口2万0702(1981)の地方都市。アゴラ(広場)、劇場、ローマ浴場など古代の遺跡が残る。

[清永昭次]


アルゴス(ギリシア神話)
あるごす
Argos

ギリシア神話に登場する、体に多くの目を備えた巨人。アルカディアを荒らすサティロスや、通行人をひっさらう怪物エキドナを退治し、またフォロネウスの子アピスの殺害者たちも殺した。ゼウスの正妻ヘラの命令で、牝牛(めうし)に変身したイオを見張っていたとき、イオを愛するゼウスの命を受けたヘルメスにより殺された。ヘラはアルゴスを哀れみ、彼のたくさんの目を取り出して孔雀(くじゃく)の羽の飾りにしたと伝えられる。

[小川正広]

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