精選版 日本国語大辞典 「名残り」の意味・読み・例文・類語
なごり【名残・余波】
- 〘 名詞 〙 ( 「波残(なみのこり)」の変化したものといわれる )
- [ 一 ] ( ふつう「余波」と書く )
- [ 二 ] ( [ 一 ]の転じたもの )
- ① ある事柄が起こり、その事がすでに過ぎ去ってしまったあと、なおその気配・影響が残っていること。余韻。余情。
- [初出の実例]「夕されば君来まさむと待ちし夜の名凝(なごり)そ今も寝(い)ねかてにする」(出典:万葉集(8C後)一一・二五八八)
- 「此時日は既に万家の棟に没しても、尚ほ、余残(ナゴリ)の影を留めて」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
- ② 特に、病気・出産などのあと、身体に残る影響。
- [初出の実例]「いと重くわづらひ給つれど、ことなるなごり残らず、おこたるさまに見え給」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
- ③ 物事の残り。もれ残ること。もれ。残余。
- [初出の実例]「いかなればかつがつ物を思ふらむなごりもなくぞ我は悲しき」(出典:大和物語(947‐957頃)一二二)
- ④ 死んだ人の代わりとして、あとに残るもの。
- ⑤ 人と別れるのを惜しむこと。また、その気持。惜別の情。また、人と別れたあと、心に、そのおもかげなどが残って、忘れられないこと。
- [初出の実例]「よべ入りし戸口より出でて、ふし給へれど、まどろまれず。なごり恋しくて〈略〉帰らむことも、物憂くおぼえ給」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
- 「暁がたにもなりにしかば、御直廬へいらせ給ひしに、兵衛督殿、御なごり申さばやとあらまして」(出典:弁内侍日記(1278頃)寛元五年九月一四日)
- ⑥ これで最後だという別れの時。最後。最終。
- ⑦ 「なごり(名残)の折」の略。
- ⑧ 「なごり(名残)の茶事」の略。
- [初出の実例]「名残、古茶の名残といふ事也。〈略〉八月末より九月へかけて催す」(出典:茶道筌蹄(1816)一)
- ① ある事柄が起こり、その事がすでに過ぎ去ってしまったあと、なおその気配・影響が残っていること。余韻。余情。