鋤床(すきどこ)層など土層内の土塊にみられる模様。低湿地の土壌の下層が水分で飽和されている部分をグライ層(位)というが、その上限の位置は地下水位の変動によって上下に変わる。グライ層は還元された状態の鉄分FeO(亜酸化鉄)を含んでおり、その沈殿物は青灰色の粘土質に富む成分である。地下水位が低下すると土層内のすきまに空気が入り込むので、亜酸化鉄が酸化されてFe2O3となり、これはいわゆる鉄錆(てつさび)色(赤褐色または赤色)を呈し、それまで青灰色であった部分に赤みのある斑紋や条脈状の模様が現れる。これが斑鉄である。刈り取り後の水田の土層を掘り割ったとき、あるいはイネの切り株を抜いたときに、土壌の垂直断面や切り株に付着している土塊に、斑鉄の模様が観察できる。比較的排水性のよい台地上の開田地で、とくに灌漑(かんがい)期間中に生じていた表層グライ層が落水後に斑鉄を交えた土層に変わる場合が著しい。しかし、地下水位の浅い低地の湿田には、冬季も過湿のため斑鉄の現れない強グライ質の土壌がある。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]
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