日本大百科全書(ニッポニカ) 「グライ層」の意味・わかりやすい解説
グライ層
ぐらいそう
地下水の影響で土壌層内の酸化鉄が還元して青灰色になった層。土壌層内にはたくさんのすきまがあり、雨水や融雪水あるいは河川の氾濫(はんらん)水はこのすきまを透過して地下水面まで達する間に、可溶性成分の分解と微細土粒の運搬作用を行っている。同時にすきまに侵入した空気は酸化作用を働き、それらの状況に応じて微生物の活動環境がつくられる。しかし、空気を欠く地下水面以下の部分では、酸化が抑制されて還元状態となり、とくに停滞水の中には水酸化第一鉄や硫化鉄などの亜酸化鉄化合物の沈殿がおこる。この沈殿物は停滞水中に沈積した粘土分と混合して、青灰色のグライ層とよばれる層をなす。普通は沖積地でも数メートル以上掘らないとこの層は現れないが、低湿地では地表下1メートル以内にグライ層が判別され、その場合は土壌断面にグライ層位となって現れる。
水位の季節的変動に伴って還元状態と酸化状態が繰り返しおこる層位もでき、その部分には斑紋(はんもん)状や膜状の酸化鉄の赤褐色集積物が発現するので、これを斑鉄とよぶ。グライ層と斑鉄層は人為的に冠水と落水を行う水田耕作地の土壌にも生ずる。
[浅海重夫]