改訂新版 世界大百科事典 「日乾煉瓦」の意味・わかりやすい解説
日乾煉瓦 (ひぼしれんが)
sun-dried brick
mud brick
粘土を手でこねたり型枠に入れるなどして成形し,天日で乾燥して固めた建築材料。〈にっかんれんが〉とも呼び,日干煉瓦とも書く。大きさはさまざまだが,方形のものが多く,手づくねのものには円錐形もある。亀裂を防ぐため,粘土に藁屑や草などを混ぜる。でき上がった日乾煉瓦は,泥を結合材として積んで壁を築き,その表面をさらに粘土で上塗りして仕上げる。乾燥し,木材に恵まれない地域では先史時代から広く使用された。古代メソポタミアでは長い間重要な建築材料として利用され,焼成煉瓦の使用が始まっても,神殿やジッグラトなどの大建造物の本体は日乾煉瓦で構築され,焼成煉瓦は壁面の仕上げなどに用いられるだけであった。西アジアにみられるテルは,日乾煉瓦やピゼ(煉土),石材による建築が倒壊したり廃棄されたのち,さらにその上に築いていった結果,高さ20~30mに達する丘となったものである。現在でもアフリカの北部,西部,西アジアから中国北部にかけて,また中南米で住宅の建築に使用されている。なお中南米を中心とする新大陸の考古学では,日乾煉瓦の呼称を用いず,スペイン語のアドベadobeを用いる。
執筆者:前田 澄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報