知恵蔵 「日本の相殺関税発動」の解説 日本の相殺関税発動 相殺関税とは、相手国の補助金付きの輸出品から自国産業が損害を受けるのを防ぐため、補助金相当額を相殺する目的で課する割増関税。WTO(世界貿易機関)でも認められた権利だが、日本がこれまで発動したことはなかった。しかし、2006年1月、日本政府は韓国の半導体メーカー、ハイニックス社製のDRAM(随時書き込み読み出しメモリー)に対して27.2%の相殺関税を発動した。これは、同社が韓国の政府系金融機関から低利融資を受けて輸出価格を不当に引き下げたとの判断に基づく。ただし、ハイニックス社はDRAMを米国や台湾でも生産もしくは生産委託しているため、日本向けの輸出を韓国以外の国・地域に切り替えることで相殺関税を回避でき、実質的な影響はほとんどないと見られている。この日本の相殺関税発動に対して韓国政府は同年3月、補助金協定に違反するとしてWTOに提訴した。なお、米国と欧州連合(EU)も同じ韓国製半導体の問題で03年に相殺関税を発動、韓国は米、EUをWTOに提訴したが、いずれも実質敗訴に終わっている。 (永田雅啓 埼玉大学教授 / 松尾寛 (株)三井物産戦略研究所副所長 / 2007年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報 Sponserd by