差別関税の一種。貿易相手国が生産または輸出において奨励金や補助金、戻税などの直接的あるいは間接的な輸出奨励策を用いて、不当に価格を低くして輸出したため、当該輸入品が急増し、自国の産業が実質的な損害を被るか、被るおそれのあるとき、または自国の産業の確立を実質的に妨げる事実があると認められるときに、貿易相手国の輸出奨励策の効果を相殺し、輸入品の競争力を弱め、自国産業を保護する目的で賦課する割増関税をいう。国家の輸出奨励策が自由貿易をゆがめるのを防止するため、相殺関税はWTO(世界貿易機関)においてもガット第6条と「補助金・相殺措置協定」の規定で認められている。わが国でもガットの規定を受けて、関税定率法第7条と「相殺関税に関する政令」で、一般税率の関税以外に、輸出国で交付された奨励金または補助金と同額以下の関税を課すことができるとしている。なお、相手国のダンピング(不当廉売)によってなされた輸入品に対しては、ダンピング防止(関)税の規定が別に設けられている。
[秋山憲治]
『中川淳司、トマス・J・ショーエンバウム編著『摩擦から協調へ』(2001・東信堂)』
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