日本振興銀行(読み)にほんしんこうぎんこう(英語表記)Incubator Bank of Japan,Limited

共同通信ニュース用語解説 「日本振興銀行」の解説

日本振興銀行

日銀出身で金融庁顧問を務めた木村剛きむら・たけし氏らが中心となり、貸し渋りに苦しむ中小企業を支援する専門の銀行として2004年に開業した。高金利定期預金を設定して業容を拡大したが、十分な査定をしないまま融資を行ったことで財務状況が悪化して10年に経営破綻し、12年に解散した。木村氏は金融庁の検査を妨害したとして逮捕され、東京地裁で有罪判決を受けた。作家江上剛えがみ・ごう氏が一時社長を務めた。

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知恵蔵 「日本振興銀行」の解説

日本振興銀行

正式名称は日本振興銀行株式会社(英文名:Incubator Bank of Japan,Limited)。2004年4月に設立され、本店を東京都千代田区に置いた。中小企業等向け融資および定期預金の受け入れを事業内容とし、金融庁の分類上は「新たな形態の銀行等」とされる。10年9月に預金保険法に基づく破綻(はたん)処理の申し出を金融庁に行い、民事再生法の申請を東京地方裁判所に行い、経営破綻した。
不良債権問題から、中小企業に対する銀行の「貸し渋り」「貸しはがし」が横行するなかで、資金繰りに苦慮する中小企業を援助する新しいタイプの銀行という名目で、日本振興銀行は設立された。その起点は、竹中平蔵元金融担当大臣の金融再生プログラムを推進するために、金融庁顧問などを務めた金融コンサルタント木村剛(後の同行社長・会長)による03年の提言に基づく。これに賛同した貸金業者や当時の東京JCメンバーなどによって準備が進められ、当時の政府の金融政策とも合致したためか、異例とも言われるほどの短期間で金融庁からの免許交付を受けた。
同行は、貸出金利は普通の銀行より高いが、「無担保」「第三者保証不要」という有利な条件で中小企業に対して融資業務を開始。同時に、一般預金者から普通の銀行よりも金利が高い定期預金を受け付けて、貸出資金にひきあてた。
その後、不良債権問題が一段落し、普通の銀行の中小企業向け融資が回復し始めると、同行の業務は手詰まりとなった。同行はこれに対して商工ローンや消費者金融から貸出債権を買い取るなどの新たな業務を始めた。このころから、同行の経営に情実融資を始めとする不審点が多数散見され、09年から金融庁の立ち入り検査が行われた。その過程で、検査忌避(検査を妨害するなどの行為)による業務停止の行政処分を受け、経営が悪化して破綻を迎えた。
その結果、制度創設後初めてのペイオフが発動された。同行は「破綻しても1千万円とその利子までは国が保護する」などのうたい文句を掲げて高金利で定期預金を集めてきた経緯もあり、制度を悪用したモラルハザードだとの強い批判がある。破綻後は一部業務について預金保険機構の子会社の承継銀行である第二日本承継銀行に譲渡され、のちに受け皿となる民間の銀行を探す。また、不良債権については整理回収機構に譲渡される。

(金谷俊秀  ライター / 2010年)

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