金融行政をほぼ一元的に担う国の行政組織。預金者、保険契約者、投資家らの保護から、金融システムの安定、金融とIT(情報技術)を融合するフィンテックへの対応、公正・透明な市場の確立までを担う。金融庁設置法に基づき2000年(平成12)、前身の金融監督庁と大蔵省(現、財務省)の金融企画局が統合して発足した。2001年の中央省庁再編に伴い、内閣府の外局となった。内閣府特命担当(金融担当)国務大臣がトップで、国会議員が副大臣、大臣政務官として補佐する。事務方トップは金融庁長官で、総合政策局、企画市場局、監督局、証券取引等監視委員会、公認会計士・監査審査会などがある。金融に関する政策・制度の企画・立案や、銀行、保険、証券会社、ノンバンクなど民間金融機関の検査・監督のほか、銀行免許の交付、公的資金の投入決定などの機能をもつ。金融商品の取引ルールづくりとその監視、企業会計基準の策定、公認会計士・監査法人の監督なども所管する。暗号資産を含むフィンテックに対応した法整備や資金洗浄などへの対応も担っている。グローバル化に対応するため、二国間あるいは多国間の金融協議に参加し、国際的な金融ルールづくりに加わる。2018年7月に、発足以来初の大規模な組織改正を実施し、不良債権処理の象徴であった検査局を廃止し、新たに設置された総合政策局が検査機能を手がけ、検査官が金融機関に立ち入って検査を行う。問題が発覚した場合、業務改善命令や業務停止命令を出すほか、免許や登録の取消しなどの行政処分を行う。意図的に検査を忌避した場合は刑事告発をすることができ、個人は1年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は2億円以下の罰金となる。
金融行政は明治以来、財政とともに一貫して大蔵省が担当してきた。しかし1995年(平成7)に住宅金融専門会社(住専)処理問題や大蔵官僚の過剰接待問題が起きると、大蔵省の権限が大きすぎるうえ、財政と金融行政をあわせもつことで利益相反が起きていると批判され、両者を分離すべきとする「財政・金融分離論」が台頭した。この批判を受け1998年6月、大蔵省が担っていた金融機関の検査・監督部門を分離して金融監督庁が発足した。その後、中央省庁の再編を前に2000年7月、大蔵省の金融制度の企画・立案機能をも吸収して金融庁が誕生した。大蔵省との局長級人事交流を制限する「ノーリターンルール」を設けて「財政・金融分離」を徹底してスタートしたが、その後「ノーリターンルール」が緩和されるなど「財政・金融分離」原則をなし崩しにする動きが出ている。
[矢野 武 2019年2月18日]
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…また,農林系統金融機関,ノンバンク,労働金庫の検査・監督は従来通り農水省,通産省,労働省との共管事項とした。なお,中央省庁再編の2003年完了時までに〈金融庁〉に改称し,金融庁では,国内金融に関する企画立案も担当することになる。他方,大蔵省は〈財務省〉に改組,当面〈金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案〉を担当するが,その〈任務及び機能を担うのは,金融システム改革の進状況等を勘案し,当分の間とする〉こととされている。…
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