日本記(読み)にほんぎ

改訂新版 世界大百科事典 「日本記」の意味・わかりやすい解説

日本記 (にほんぎ)

幸若舞曲曲名天地の始まりと神々出現の次第,日本国の始まりを語る。伊弉諾(いざなき)・伊弉冉(いざなみ)2尊が日本国を開くために大海の面に鉾(ほこ)を下ろして探るが何も当たらない。体の各部分から世界が生じ,やがて五行説を列挙して,すべて三宝に収まり,一心三観みな空にして隔てなしと,天地和合の理を説いて再び鉾を下ろし,淡路島を得る。鉾の滴(したた)りが大海を漂う大日梵字の上に止まって生じた国のゆえに大日本国という。これより天竺月氏国(月),唐土震旦国(星),日本が生じた。日本こそ日をかたどる三国一の朝よ,とたたえる。

 本曲は祝言的な曲であるが,同文の本文が《神祇陰陽秘書抄》(1526成。天理図書館吉田文庫)という両部神道写本にも収められている。中世には《日本書紀》神代巻を解釈することが盛んに行われ,その解釈活動そのものが神道の活動であったが,本曲はこれと同種の活動によって成立したと考えられる。同文が神道書にあることからすると,本曲は独立した曲でありながらも,さまざまな物語が展開される舞曲の世界の起源を示すという意図がかくされているのかもしれない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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