梵字(読み)ボンジ

デジタル大辞泉 「梵字」の意味・読み・例文・類語

ぼん‐じ【×梵字】

古代インドサンスクリット語を書くのに用いたブラーフミー文字と、その系統の文字の総称。その起源は北セム系文字。→悉曇しったん
[類語]文字文字もんじ鳥跡ちょうせき鳥の跡用字表記点画てんかくレター邦字ローマ字アルファベットハングル大文字小文字頭文字イニシャル英字数字漢字仮名真名片仮名平仮名万葉仮名字母表音文字表意文字音字意字象形文字楔形くさびがた文字甲骨文

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精選版 日本国語大辞典 「梵字」の意味・読み・例文・類語

ぼん‐じ【梵字】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代インドで行なわれた brāhmī という字体から発達した文字で、梵語、すなわちサンスクリットを記載するのに用いる文字。日本ではその一体が行なわれた。元来は左横書きであるが、日本では右縦書となった。基本となる文字、すなわち摩多(また)(a)・(i)・(o)など、体文(たいもん)(ka)・(ca)・(ta)などの類。また、これによって書かれた文章書物など。梵書。→悉曇(しったん)
    1. [初出の実例]「声明業一人 応誦梵字真言大仏頂及随求等陀羅尼」(出典:類聚三代格‐二・承和二年(835)正月二三日)
    2. [その他の文献]〔皮日休‐雨中遊包山精舎詩〕
  3. ぼろ(梵論)
    1. [初出の実例]「近世に、ぼろんじ・梵字・漢字など云ける者、その始めなりけるとかや」(出典:徒然草(1331頃)一一五)

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改訂新版 世界大百科事典 「梵字」の意味・わかりやすい解説

梵字 (ぼんじ)

ブラフマー(梵天)の気息より生じたと考えられているブラーフミー文字アショーカ王の時代,この文字は,ダンマリピーDhammalipīとかダンマディピーDhammadipīと呼ばれていたが,後代の文献は,バンビーBambhīあるいはブラーフミーとするようになった。この文字の起源について,外来説を排し,インド固有のものであるとし,ブラフマンの創造に帰して,神聖化したものである。4世紀から6世紀にかけて,この文字は南北両系に大きく分かれ,北方系の文字,つまり,グプタ文字より,6世紀ごろ派生した文字がシッダマートリカーSiddhamātṛkā文字である。10世紀にかけて,ガンガーガンジス)川中流域,東インド,西北インドさらにカシミールにおよぶ地域に普及していた。この文字から現行のナーガリー,ベンガル,シャーラダー文字などが派生するが,シッダマートリカー文字は仏教の伝播とともに国境を越えて,中国,日本に伝わり,梵字あるいは悉曇(しつたん)文字として知られるようになった。

 中国,日本では,字形,音韻,字義を集大成する悉曇学が成立し,日本語の五十音図の成立にもかかわった。墓標,卒塔婆,五輪塔や護符に刻まれたり書かれたりしてよく知られている。法隆寺蔵貝葉(ばいよう)写本《般若心経》,《仏頂尊勝陀羅尼経》の悉曇文字はこの文字の古形であり,この写本は現存の古い貝葉写本を代表している。マックスミュラー南条文雄によって世界に紹介されたのは,1884年のことである。法隆寺の僧たちは,この写本を保存することで,この文字を〈梵字〉たらしめたのであった。一方,インドでは,9世紀ごろより広く普及し始め,10世紀以降,シッダマートリカー文字に取って代わるようになったナーガリー文字は,その名に〈デーバ(神)〉が付けられ,デーバナーガリー文字として神聖化されるようになった。19世紀には活字が作られ,サンスクリットもこれで表記されるようになった。
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百科事典マイペディア 「梵字」の意味・わかりやすい解説

梵字【ぼんじ】

インドで用いられるブラーフミー文字の漢訳名。ブラフマンの創造した文字という意味。インドでは紀元前後にセム系文字に由来するブラフミー文字とカローシュティー文字の2系統があり,前者はグプタ系文字から発達したシッダマートリカー文字となり,さらに7世紀ごろナーガリー文字に発達,10世紀にはデーバナーガリー文字として固定した。現在,サンスクリットヒンディー語の印刷に用いられるのはデーバナーガリー文字である。→悉曇(しったん)
→関連項目ネパール語パンジャービー語

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「梵字」の解説

梵字
ぼんじ

セム系文字がインド人によって整備され,紀元前5世紀頃ブラーフミー文字として成立するが,さらにそれから発達したグプタ文字(4~5世紀),悉曇(しったん)文字(6世紀),デーバナーガリー文字(11世紀)などの北方梵字と,ドラビダ系文字やシンハラ文字などを含む南方梵字の総称。仏典を表記するのに使われた悉曇文字が,仏教とともに中国や日本に伝来され,密教とのかかわりあいで神秘化された文字とみなされるようになり,これを狭義の梵字とよぶようになった。今日も一般寺院で卒塔婆(そとば)や護符などに用いる。

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防府市歴史用語集 「梵字」の解説

梵字

 仏典を書くのに使われた悉曇[しったん]文字が仏教とともに中国や日本に伝わり、密教[みっきょう]とのかかわりあいで神秘化された文字として使われるようになったものです。

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普及版 字通 「梵字」の読み・字形・画数・意味

【梵字】ぼんじ

古代インドの文字、サンスクリット。

字通「梵」の項目を見る

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