あらなくに(読み)アラナクニ

デジタル大辞泉 「あらなくに」の意味・読み・例文・類語

あら‐なくに

[連語]《動詞「あり」の未然形+打消しの助動詞「ず」のク語法+格助詞「に」》
ないことだなあ。ないことよ。
乎布をふの崎漕ぎたもとほりひねもすに見とも飽くべき浦に―」〈・四〇三七〉
ないことなのに。いないのに。
神風かむかぜ伊勢の国にもあらましをなにしか来けむ君も―」〈・一六三〉

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精選版 日本国語大辞典 「あらなくに」の意味・読み・例文・類語

あら【有】 なく に

  1. ( 「なく」は、打消の助動詞「ず」のク語法で、ないことの意。「に」は感動を表わす古代の助詞 )
  2. ないことだなあ。
    1. [初出の実例]「乎敷(をふ)の崎漕ぎ徘廻(たもとほ)り終日(ひねもす)に見とも飽くべき浦に安良奈久爾(アラナクニ)」(出典万葉集(8C後)一八・四〇三七)
  3. ( 多くの場合、前後関係から逆接の気持がこもって ) ないことなのになあ。ないのに。
    1. [初出の実例]「ささなみの大山守(おほやまもり)は誰(た)がためか山に標(しめ)(ゆ)ふ君も不有国(あらなくに)」(出典:万葉集(8C後)二・一五四)

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