前後(読み)ゼンゴ

デジタル大辞泉 「前後」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ご【前後】

[名](スル)
ある位置を境にした、まえとうしろ。「前後車輪」「前後を見回す」
時間的にみた、まえとあと。「大会開幕前後の慌ただしさ」
物事順序や相互の関連。また、筋道。「話に前後のつながりがない」「前後見境もなく買いまくる」

㋐順序が逆になること。あとさきになること。「話が前後する」「紹介が前後する」
㋑ほとんど間隔をおかずに続くこと。「両者前後してゴールする」
出来事の、おおよその時期。ころ。「結婚した前後は生活が苦しかった」
(接尾語的に)数量・年齢・時間などを示す語に付いて、その数値に近い意を表す。ぐらい。内外。「十人前後」「三五歳前後」「九時前後
[類語](4㋐)前後ろ後先後ろ前

まえ‐しりえ〔まへしりへ〕【前後】

前方後方。また、勝負事などで、右方左方
「上の女房―と装束き分けたり」〈絵合

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「前後」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ご【前後】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「せんご」とも )
  2. ある場所を境にして、そのまえとうしろ。また、ある物体の前とうしろ。先後(せんご)。あとさき。
    1. [初出の実例]「東西引望無行人、前後廻看絶世隣」(出典経国集(827)一四・秋雲篇示同舎郎〈滋野貞主〉)
    2. 「前後(センゴ)を見れども、いよいよないに極りける」(出典:浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)一)
    3. [その他の文献]〔春秋左伝‐隠公九年〕
  3. 時間的なあとさきをいう。
    1. (イ) 時間の流れやある物事の推移の一時点を境にしてそのまえとあと。あるときを中心にした一連の状況。また、物事の順序。先後。あとさき。
      1. [初出の実例]「真率無前後、鳴求一愚賢」(出典:懐風藻(751)賀五八年宴〈伊支古麻呂〉)
      2. 「三四日等閑(なほざり)にして置いた咎が祟って、前後(ゼンゴ)の続き具合が能く解らなかった」(出典:明暗(1916)〈夏目漱石〉五)
    2. (ロ) ( 副詞的に用いて ) 時間的に、あとにもさきにも、あることの以前にも以後にも。
      1. [初出の実例]「河津は、せんこ相撲はこれがはじめなれば、やうもなくするするとあゆみより」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
  4. 書物などの前編と後編。また、ひと続きのものの初めから終わりまで。
    1. [初出の実例]「中本の方は前後六冊でめでたしめでたしに満尾(おさまっ)てゐるから」(出典:人情本・英対暖語(1838)二)
  5. ( ━する ) 順序が逆になること。あとさきになること。また、相違すること。
    1. [初出の実例]「彼両人相並、敢不前後争権之意趣以之可知」(出典:玉葉和歌集‐寿永二年(1183)七月二八日)
    2. 「長次は昼からの酒に心みだれ、いふほどの事前後(ゼンゴ)して、ひとへにうつつのごとし」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸)
  6. ( ━する ) あいだをあまり置かないで続くこと。相次ぐこと。続くこと。
    1. [初出の実例]「路のほとりなる頭、すべて四万二千三百余りなんありける。いはむや、その前後に死ぬるもの多く」(出典:方丈記(1212))
    2. 「彼の卒業と前後して」(出典:屋根裏の法学士(1918)〈宇野浩二〉)
  7. 物の数、年代、時間、年齢を表わす語や数字について、それにごく近いことを示す語。ぐらい。ころ。内外。絡(がらみ)
    1. [初出の実例]「夜のやはんの前後(センゴ)に、八十ばかりの老僧が」(出典:狂言記・福渡(1660))

前後の補助注記

「平家‐一〇」に「小八葉の車に先後(ゼンゴ)(高良本ルビ)の簾をあげ、左右の物見をひらく」の例があり、「先後」を用いることもあった。


まえ‐しりえまへしりへ【前後】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 弓の競射などで、前手組と後手組。
    1. [初出の実例]「二月十五日に、院の小弓はじまりて、出居などののしる。まへしりゑわきてさうぞけば」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  3. 二方に分かれて勝負を争う競技で、左方と右方と。
    1. [初出の実例]「上の女房、まへしりへとさうぞきわけたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)

まえ‐うしろまへ‥【前後】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 前と後ろ。また、過去と未来。あとさき。
    1. [初出の実例]「矢を一手給へかし。其的串の前うしろをいん」(出典:古今著聞集(1254)九)
  3. 衣服などの、前と後ろがあべこべになっていること。また、そのさま。うしろまえ。

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