柿本人麻呂歌集(読み)かきのもとのひとまろかしゅう

改訂新版 世界大百科事典 「柿本人麻呂歌集」の意味・わかりやすい解説

柿本人麻呂歌集 (かきのもとのひとまろかしゅう)

万葉集》成立以前の和歌集人麻呂が2巻に編集したものか。春秋冬の季節で分類した部分をもつ〈非略体歌部〉と,神天地人の物象で分類した部分をもつ〈略体歌部〉とから成っていたらしい。表意的な訓字を主として比較的に少ない字数で書かれている〈略体歌〉には,676年(天武5)ころ以後の宮廷宴席で歌われたと思われる男女の恋歌が多い。いっぽう助詞などを表音的な漢字で書き加えて比較的に多い字数で書かれている〈非略体歌〉には,680-701年ころの皇子たちを中心とする季節行事,宴会,出遊などで作られた季節歌,詠物歌,旅の歌が多い。《万葉集》の巻二・三・七・九~十四に散在して,短歌約333首,旋頭歌35首,長歌2首,合計約370首を数える。国語の表記史や人麻呂作歌の形成史や万葉時代の和歌史にとって貴重な資料であり,和歌の分類や〈歌集〉の編集の歴史の出発点をなすものである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の柿本人麻呂歌集の言及

【柿本人麻呂】より

…生没年,経歴とも不詳ながら,その主な作品は689‐700年(持統3‐文武4)の間に作られており,皇子,皇女の死に際しての挽歌や天皇の行幸に供奉しての作が多いところから,歌をもって宮廷に仕えた宮廷詩人であったと考えられる。人麻呂作と明記された歌は《万葉集》中に長歌16首,短歌61首を数え,ほかに《柿本人麻呂歌集》の歌とされるものが長短含めて約370首におよぶ。質量ともに《万葉集》最大の歌人で,さらにその雄渾にして修辞を尽くした作風は日本詩歌史に独歩する存在とみなされる。…

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