内科学 第10版 「横隔膜の形態と機能」の解説
横隔膜の形態と機能(横隔膜の疾患)
横隔膜には食道裂孔(esophageal hiatus),大動脈裂孔(aortic hiatus),大静脈孔(vena caval foramen)があり,食道裂孔には食道,迷走神経が通り,大動脈裂孔には下行大動脈,胸管,奇静脈,半奇静脈が通り,大静脈孔には下大静脈が通る(図7-16-1).
横隔膜は呼吸補助筋で吸息に関係する.特に安静換気時の呼吸運動に重要な役割をもっている.吸気時に横隔膜が正常に収縮すると横隔膜は下がり腹腔内圧は上昇し腹壁は突き出る.同時に胸腔内圧の陰圧化が増大し吸気時の肺気量が増加する.呼気時には弛緩した横隔膜が上昇する.胸部X線写真上,通常左右ともになめらかな上に凸のドーム状に投影される.ドーム状の形状は換気に重要であり慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)で生じる肺過膨張による横隔膜平坦化は換気効率を低下させる.[鰤岡直人・清水英治]
■文献
鰤岡直人:胸部写真が正常な呼吸器疾患.フレイザー,呼吸器病学エッセンス: 清水英治,藤田次郎監訳, pp 1001-1012, 西村書店,2009.
Fraser RS, Neil C et al: Disease of the diaphragm and chest wall. In: Synopsis of Diseases of the Chest (3rd ed), pp 897-911, Elsevier, Philadelphia, 2005.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報