朝日日本歴史人物事典 「橘在列」の解説
橘在列
平安中期の漢詩人。学生としての字は卿。出家して法名尊敬。秘樹の3男。大学寮に学び才能を称賛されたが,門閥優先の風潮のもと,途中で学業を断念。官途に就き,安芸介,弾正少弼などを歴任し,天慶7(944)年比叡山に登って出家を遂げ,延暦寺に止住した。文人社会の不正を暴露し,身の不遇を訴えた落書(『本朝文粋』『江談抄』)の作者とされるのも,このような経歴からであろう。貴族社会と文人社会との二重の階級制の重圧に苦しみ,信仰に救いを求めた文人の一典型である。弟子の源順が天暦8(954)年家集『沙門敬公集』を編纂したが伝存しない。
(後藤昭雄)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報