歯根嚢胞(読み)しこんのうほう(英語表記)Radicular cyst

六訂版 家庭医学大全科 「歯根嚢胞」の解説

歯根嚢胞
しこんのうほう
Radicular cyst
(口・あごの病気)

どんな病気か・原因は何か

 歯根嚢胞顎骨のなかに生じる嚢胞で最も頻度が高いものです。慢性に進行する歯根の先端部の炎症根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん))によって生じる炎症性肉芽(にくげ)(歯根肉芽腫(にくげしゅ))のなかに、歯根膜に残っていた上皮成分が入り込んで、これから歯根嚢胞が生じるとされています。

 根尖性歯周炎歯牙(しが)歯髄死(しずいし)に引き続くものがほとんどで、う蝕(しょく)、歯の破折などの外傷、修復物(とくにレジン充填(じゅうてん))の刺激によって歯髄壊死を起こすものが多くなっています。

症状の現れ方と検査

 症状としては、原因となった歯の変色、打診痛、根尖に相当する歯肉部の圧痛や瘻孔(ろうこう)の存在、圧迫による不快感、骨の膨隆(ぼうりゅう)などです。X線所見では、原因となった歯の根尖付近に接し、歯根膜腔に移行する類円形の透過像がみられます(図18)。

治療の方法

 嚢胞が小さければ、歯の内部を経由した治療法(根管治療)で消退する場合もありますが、大きくなったものでは、歯肉を切開し、顎骨を削って嚢胞を摘出し、さらに原因となった歯の根尖部を切除する歯根端切除術が必要になります。歯根端切除部の根管を緊密に閉鎖することが、再発や治癒不全を防ぐために重要です。


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歯根嚢胞」の意味・わかりやすい解説

歯根嚢胞
しこんのうほう
radicular cyst

根尖嚢胞ともいう。歯髄炎から歯の根尖部の周囲慢性炎症が起ると,やがてそこに嚢胞を生じることがある。小指の頭より小さいものが多いが,気づかれずにいると次第に大きくなり,周囲の骨を圧迫,吸収して,顎骨を殻のように薄くしてしまうことがある。X線写真で容易に発見できる。内容液は淡黄色透明のことが多いが,炎症が強いと化膿して濁る。小さいものは根管治療でなおるが,それ以外は根尖切除術により,嚢胞内に突出している根尖部とともに除去するか,抜歯と嚢胞摘出を行う。

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百科事典マイペディア 「歯根嚢胞」の意味・わかりやすい解説

歯根嚢胞【しこんのうほう】

慢性根尖(こんせん)性歯根膜炎の経過中に根尖部に生ずる嚢胞。無症状のことが多いが,顎骨を吸収して増大する。細菌感染により膿瘍(のうよう)となることが少なくない。歯根切除術あるいは抜歯を行って摘出する。

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