内科学 第10版 「毛細血管拡張性失調症」の解説
毛細血管拡張性失調症(原発性免疫不全症候群)
概念・病因
上下気道の易感染性に眼球結膜・皮膚の毛細血管拡張と小脳性運動失調を合併する.DNA二重鎖切断修復に関与するATM遺伝子の異常による.
臨床症状
上下気道の感染が反復し遷延する.1歳頃より毛細血管拡張や運動失調が出現する.
検査成績
T細胞数の減少,リンパ球増殖反応の低下を認め,血清IgG,IgE,IgAも低値.α-フェトプロテインの増加や染色体の異常も認める.
診断
副鼻腔炎,中耳炎,肺炎などの上下気道の感染に加えて,毛細血管拡張と運動失調を合併していれば診断可能であるが,乳児期の易感染性のみでは診断は困難である.確定診断はATM蛋白発現の検討と遺伝子検査による.
合併症
悪性腫瘍の合併が高率である.急性リンパ性白血病,悪性リンパ腫の頻度が高く,化学療法に対する副作用の頻度が高い点に注意が必要である.気管支拡張症もしばしば合併する.
予後
悪性腫瘍や気道感染症により小児期に不幸な転機をとることが多い.
治療
抗菌薬の予防投与や免疫グロブリン補充療法による感染予防が行われるが,根治療法は存在しない.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報