悪性リンパ腫(読み)あくせいりんぱしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「悪性リンパ腫」の意味・わかりやすい解説

悪性リンパ腫
あくせいりんぱしゅ

リンパ組織に発生した進行性悪性の腫瘍(しゅよう)で、癌(がん)と同じ性質をもっている。原因は不明の点が多いが、なかにはウイルスが原因と確定されつつあるものもある(バーキットリンパ腫)。発生部位は、リンパ球がつくられるところならどこにでもできるが、もっとも多いところは、頸(けい)部、わきの下、鼠径(そけい)部のリンパ節であり、進行すると全身のリンパ節からさらに骨髄内にも拡大し、血液中にも多数の病的リンパ球が出現する。白血性悪性リンパ腫といわれ、リンパ性白血病と同じ症状を示すことが多い。顕微鏡所見からホジキン病非ホジキンリンパ腫に大別され、さらに非ホジキンリンパ腫リンパ肉腫細網肉腫濾胞(ろほう)性リンパ腫およびバーキットリンパ腫に細別される。また最近になって、増加しているリンパ球の形からの分類が行われている。病巣の広がり方からI期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分けられるが、I、Ⅱ期では、はれたリンパ節が横隔膜のいずれか一方にあり、Ⅲ、Ⅳ期になると両側に広がり、Ⅳ期では全身的にびまん性に広がる。外科手術放射線照射抗癌剤エンドキサンビンクリスチンアドリアマイシンブレオマイシンなど)、副腎(ふくじん)皮質ホルモンがそれぞれの病期にあわせて用いられるが、Ⅲ、Ⅳ期は予後が悪くなり、I、Ⅱ期では完全に治る例もある。

 また、免疫をその役目としているリンパ組織が侵されるために、細菌感染とかウイルス感染に対する抵抗力が低下して、感染症にかかりやすくなったり、自己免疫性疾患が合併しやすくなる。最近は、免疫力を強くするためにBCG、CWSその他の免疫賦活剤が併用されて効果を高めている。

[伊藤健次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「悪性リンパ腫」の意味・わかりやすい解説

悪性リンパ腫
あくせいリンパしゅ
malignant lymphoma

リンパ節の腫脹をおもな症状とする腫瘍性疾患の総称。リンパ球 (免疫に関係する白血球) にTとBの2種類あることが発見されるなど,免疫細胞学の発達に伴って,悪性リンパ腫の分類の再検討が行われ,現在では,顕微鏡による組織像によって,(1) ホジキンリンパ腫,(2) 非ホジキンリンパ腫の2つに分類される。日本では (2) が全体の 80%近くを占めている。 (2) はさらにBリンパ腫とTリンパ腫に分類される。このTリンパ腫細胞の中にウイルス粒子が発見され,これが原因の一つと考えられるようになった。男性に多い病気で,リンパ節腫脹のほか,発熱,倦怠感,食欲不振などの全身症状を伴い,皮膚の発疹が出ることもある。悪性リンパ腫が全身に広がると,10年ぐらい前までは生存期間は1年未満であったが,最近は放射線治療と化学療法の発達に伴い3~4倍に延び,治癒する症例もふえている。

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