日本大百科全書(ニッポニカ) 「根治療法」の意味・わかりやすい解説
根治療法
こんちりょうほう
疾患の完全治癒を目ざしてその原因そのものを取り除こうとする治療法。原因となっている病変そのものを除去する意味から原因療法ともいい、そのために実際に臨床で行われる治療が根治的治療である。具体的には、細菌やウイルスなど病原体に感染した場合に持続的な抗生物質の使用によって完全治癒させることや、特定の悪性腫瘍(しゅよう)に対して、他臓器への転移がないことを確認したうえで外科的に全摘出することなどがあげられる。花粉症によるアレルギー性鼻炎に対して、注射や舌下への噴霧などによりスギ花粉を持続的に投与するアレルゲン免疫療法(減感作(げんかんさ)療法)なども、根治療法の一つといえる。
根治を目的とする以外の治療は、姑息(こそく)的治療や対症療法などという。これは疾患に伴って起きている症状を軽減するために行われる治療で、「姑息的」は「一時的な」という意味で用いられている。一般的な例としては、かぜ症候群の患者に対し、鼻、のど、気管支などのそれぞれの症状を緩和するための投薬を行うことなどがある。根治不能な悪性腫瘍などに対しては、延命や苦痛の軽減が治療の目的となる。また、患者の状態が悪く積極的な治療を行うことが困難な場合などに、症状を緩和する治療のみにとどめて待機する待機療法も姑息的治療に含まれる。
[編集部]