日本の自動車技術240選 の解説
気筒休止エンジン対応アクティブ振動騒音制御装置
製作(製造)年2003
製作者(社)本田技研工業株式会社
資料の種類2003年モデルインスパイアのカタログなど
現状量産中
通称名アクティブコントロールエンジンマウント / アクティブノイズコントロール
技術用途気筒休止機構による大幅な燃費性能の向上と気筒休止を乗員に意識させない高品位なV6エンジンの振動騒音商品性能の両立
適用車種2003インスパイア・2004エリシオン(V6)・2005USオデッセイ・2005USアコードIMA2006PILOT・(2005レジェンド)
製作開始年2003
実用化年2003
設計者井上敏郎・松岡英樹・佐野久
協力者根本浩臣・三笠哲雄・高橋彰・箕輪聡
装置構成エンジンECU(エンジン制御情報)・マウントコントロールユニット・アクチュエータ付きエンジンマウントノイズコントロールユニット・オーディオシステム・室内音検出用マイクロホン
性能機能アクティブエンジンマウントは、クランクパルスとTDCパルスからエンジン振動を推定し、それを基に車体へのエンジン振動伝達が低減するような信号をコントロールユニットで生成し、その信号を用いてエンジンマウントに仕込まれたソレノイドアクチュエータを駆動する。これにより、エンジンマウントからの振動に起因するステアリングの振動や室内音を低減する。アクティブノイズコントロールは、エンジン回転パルスと車室内に配置したマイクロホンからの室内音信号を基に室内音を低減する打ち消し信号をコントロールユニットで生成し、その信号を用いてオーディオ用のスピーカを駆動する。これにより、吸気音・排気音や駆動系からの振動伝達に起因する室内音を低減する。これらを組み合わせて気筒休止エンジンに適用することで、燃費性能と振動騒音商品性能の両立を実現した。
効果本システムの適用により、気筒休止(3気筒走行)時の室内こもり音や車体振動を大幅に低減でき、ユーザーは気筒休止状態か、V6状態かを意識することなく、走行することが出来るようになる。
エピソード・話題性本技術は、研究当初こそ性能を優先にした技術開発でありましたが、実際に量産車への適用という点では、常に、コストとの戦いでありました。結果的には、コストを下げることがシステムの価値を上げることに繋がり、更に軽量化や省エネという時代のニーズとマッチすることで量産車への標準適用が実現され、長年の研究に報いることが出来ました。また、エンジン開発関係者からは、『振動騒音屋が燃費を出してくれた』と歓迎してもらいました。話題性: 2004年自動車技術会開発賞受賞 2005年音響学会技術開発賞受賞
特徴アクティブエンジンマウントは、センサーを用いない振動推定制御を新規に開発し、安価なソレノイドアクチュエータと組み合わせることで実現した。アクティブノイズコントロールは、従来DSPなど高価な演算プロセッサを必要とした制御技術に対し、エンジンこもり音の特徴から大幅に演算量を削減する制御アルゴリズムを構築し、それを安価なマイコンで実現した。更に、オーディオシステムとアンプやスピーカを共用することを実現した。これらにより、量産車両に標準適用することが可能となった。
参考文献ホンダテクニカルレビュー2003年秋号自動車技術会2003年秋季大会前刷集2004年SAE World Congress前刷集Active2004前刷集2005年音響学会秋季大会前刷集
紹介燃費を高める可変シリンダーシステムを採用したV6エンジンを搭載した新型車両に対し、気筒休止時の振動騒音の対策技術としてアクティブコントロールエンジンマウント技術とアクティブノイズコントロール技術を標準装備として適用することで、燃費性能と商品性能を高次元で両立した。
出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報