河川の争奪(読み)かせんのそうだつ(英語表記)river piracy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「河川の争奪」の意味・わかりやすい解説

河川の争奪
かせんのそうだつ
river piracy

浸食力の大きい河川の上流部が,他の河川の一部を奪い取る現象。隣接した2つの川に浸食力の差異があるとき,一方の川の上流部は激しい頭部浸食を行なって上流部の流路を延長し,分水界を越えて他の川の流路に達すると,浸食力の弱い川はその地点から上流部を切取られて,水流は浸食力の強い川のほうへ注ぐようになる。奪い取られた地点を争奪の肱 (ひじ) という。奪取した川は水量を増して浸食力はますます強まり,奪取された川は水量が減少して無能河川と呼ばれる。メコン川メナム川の上流部を奪取した例。広島県太田川支流根谷川は,江川の支流の源流部を奪取したもの。争奪は川の生存競争で,流域の変化が起る。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の河川の争奪の言及

【谷頭浸食】より

…谷頭の上流側への後退が活発に行われると流域が拡大し,分水界が移動する。隣接する流域どうしでどちらか一方の谷頭浸食が急速に進行すると河川の争奪が起こる。ミシシッピ川のような大河が谷頭浸食によって現在の水源にまで延長されたとは考えにくいが,小さな支流の多くは谷頭浸食の結果生じたものであり,多くの小河谷の成長にとっては大きな意味をもつ。…

【浸食作用】より

…もとは〈おかし,むしばむ〉の意で侵と書いた。土地に働きかけて地形を変化させる作用(〈地形形成営力〉または〈地形営力〉という)のうち,内部から働く地殻運動や火山活動を内作用,外部から働く風,雨,河川,波などおもに太陽エネルギーに基づく作用を外作用とするが,浸食作用は後者に属する。外作用による地形営力は浸食,運搬,堆積の3作用から成る。浸食と運搬の過程は連結しており,これにより地表の物質は砕かれ,削り取られ,運び去られ,土地は変形させられる。…

【分水界】より

…浸食力の大きい河川が谷頭浸食を続け,それまでの分水界を越えて隣の流域に侵入し,その流路に達した場合,その地点より上流の隣の河流は,侵入してきた河谷へと注ぐことになる。このような現象を河川の争奪piracyと呼ぶ。河川の争奪は急激な分水界の移動をもたらし,争奪された地点より下流側の流路の状況を一変させる。…

※「河川の争奪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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